2012年8月  2.もう二度と過ちを繰り返さぬように
 昨年の12月13日、ソウルの日本大使館前で行われた日本軍「慰安婦」問題解決を促す定期水曜集会1000回目の「水曜デモ」に連帯して、日本各地でデモが繰り広げられ、北九州の小倉駅でもデモが行われました。参加者たちがマイクを回し、通行人たちに向かってリレートークをしていました。その中で、ある青年の言葉に感心が寄せられました。
 彼は、「福島原発の問題は未だ責任追及されておらず、刑事事件として扱われていない。そのような日本人の傾向は、戦争責任についての取り組みのときから何ら変わっていない。従軍慰安婦という厳然とした悲しい歴史がまるでなかったかのように教科書から削除されていく傾向がある。それは自虐的歴史観だと、国民が誇りを持てるように愛国心を強要していく。人を踏みつけ、犠牲にしてきた事実に蓋(ふた)をする。そのように犠牲者に投げつけたブーメランが自分たちののど元に返ってきたのが福島の事件であったのではないか」と語りかけました。
 日本人の罪の問題を浮き彫りにしているように感じ、とても感心しました。ヘンリー・ナーウェンは、そのような現代人の傾向を「バンドエイド療法」と呼んでいます。負の歴史、他者を傷つけたり、傷つけられたりした痛み、その傷口がまるでなかったかのように「バンドエイド」で蓋をして、見てくれだけはきれいに装っているのです。日本が今抱えている負の連鎖は、ここに元凶、原罪があるのではないでしょうか。私たちの国が犯してしまった負の歴史、痛みの歴史に向き合い、そこから立ち上がっていかなければ、私たちは同じ過ちを再び繰り返してしまうでしょう。
 脱原発、平和の構築を祈るとき、福島原発に関する事実に蓋をすることなく、そこに至った道をふり返り、その一人ひとりの責任を、自分のものとして受け止める勇気を願って、日本カトリック平和旬間(8月6日〜8月15日)を過ごしてまいりましょう。