2013年1月  2.中東のキリスト者
 中東は2013年も非常に悲惨な状態が続いています。 国連は1月2日に、シリアの内戦での死者の数が6万人を超えたことを報じています。その数は、一昨年の東日本大震災の死者・行方不明者の数をはるかに超えています。シリア内戦の和平調停にあたっているブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表は、昨年末に、急速に悪化するシリア情勢について緊急警告を発し、来年1年間の死者数は10万人に達するだろうと述べています。日本からゴラン高原に停戦監視の国連のPKOに派遣されていた自衛隊は、シリアの内戦の影響で隊員の安全が確保できないために、17年間の活動に終止符を打って撤収しました。
 パレスチナ情勢もエジプトの政治的混迷やシリアの内戦の影響を受けて、緊張感を増しています。昨年11月にはイスラエルはガザ地区のハマース(パレスチナの政党・ムスリム同胞団が母体)に対して大規模な攻撃を行い、それに対抗してハマースはミサイルを発射して脅威を与えました。幸にすぐに停戦が実現しましたが、背景にあるイスラエルとパレスチナの対立抗争の根は深く、完全な和平の実現まで、まだまだ遠い道のりが必要でしょう。
 このような中東の今日の情勢を、私たちはどのように受け止めているでしょうか。一般市民を巻き込んだ国際紛争や内戦の中で、私たちの兄弟であるキリスト者がたくさん暮らしています。第2バチカン公会議の公文書の一つに「キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言」があります。アジアのカトリック教会は、この宣言が示す道を歩み、諸宗教が混在する中で互いに尊重しながら信仰を守る知恵を育んできました。宗教の共存共栄は、今日の中東の和平に必要な知恵です。中東の混乱の源を宗教間の争いに帰結することは間違いです。しかし政治勢力は宗教を利用します。
 教皇が掲げた「中東のキリスト者」の意向を踏まえながら、宗教の違いを超えた真の平和の実現に向かうことができるように祈り、この一週間をすごしてまいりましょう。