2013年3月  2.美
 あらゆるものには独特な美があります。たとえば、それぞれの花には、形や色彩や香りなどの絶妙な調和が見受けられます。花を眺めていると、しばしの間、日ごろの疲れが吹き飛びます。美しいものは人間の心を和ませます。何らかの善(よ)さをそなえているものは人間に安心感を与えるのです。
 人間それぞれにも、独自性があります。私たち一人ひとりには、長所と欠点が混ざり合っていますが、その混ざり具合が個性を生じさせます。もちろん、欠点は修正していく必要がありますが……。しかし、私たちそれぞれがもっている独特なゆがみもまた、ひとつの愛らしい特徴となっていることも否(いな)めません。人間の個性は、それぞれの人間のもつ限界によっても増幅されていきます。無茶な完璧さではなく、ゆったりとした歩調での成熟こそが、神が私たちに対して望む生き方なのだと言えましょう。心のなかで神と対話しながら前進をしてまいりましょう。
 異質な要素を同時にあわせもつときに、そこに美が生じます。もちろん、均整のとれた同じ形の物事の集合体もまた美を感じさせますが……。しかし、いびつで不ぞろいな物事の集合体もまた独特なる味わいをかもしだします。たとえば、交響曲の演奏の場合でも同様です。緻密で均等な音を繰り出す楽器のパートも必要ですが、同時に不協和音のような異質な音を提起する楽器のパートも決してないがしろにはできません。均質な美と異質な美とが響き合うときに、演奏メンバー全体が強固な連帯の意識を高めはじめます。指揮者は神です。あらゆるゆがみもまた、神の絶妙なる指揮によって、あまりにも心地よく美しい交響曲に生まれ変わっていくのです。神の手腕に信頼して思う存分生きてみることが人間の美しきふるまいなのではないでしょうか。
 自然を大切にするという教皇の意向を念頭におきながら、美を意識してこの一週間を過ごしてまいりましょう。