2013年3月  5.ゆるしと支え
 私たちが一番必要としていることは、誰かから支えてもらうことであり、同時に誰かを支えることです。しかも、気兼ねなく、相手に気をゆるすほどのリラックスした状態で。つまり、私が生きているということが相手によってゆるされて、支えていただくことが必要です。同時に、私も相手の存在をゆるし、支えていくことも欠かせません。互いに相手を尊重し合って協力していくことが、人間同士のかかわりにおいては重要となってくるのです。
 「社会的孤立の解消」を目指すには、まず身近なところから、ゆるしと支えの実践を始めていきましょう。相手を相手としてありのままに認めること。そして、相手の歩調に合わせてみるところから、すべてが始まります。自分の都合で相手を利用したり、自分の理想に相手をはめこもうとするときに、必ず衝突が起こります。相手とのぶつかり合いが人間同士の断絶を生み、社会的孤立の状況をつくりだすことにつながります。まず、相手をありのままに眺めてみましょう。自分の都合を横に置いて、ひたすら相手を相手として虚心に見てみることが、相手を理解することの手始めになります。ひたすら相手の想いに耳を傾けることが重要です。
 しかし「相手が存在することを認め、ゆるして、支える」ことほど難しいことはありません。その姿勢の大切さに関して、私たちは頭では十分に理解しているつもりです。しかし、自分で実行するとなると、なかなかできません。相手をありのままに理解して支えつづけるという態度は、歴史上、イエス・キリストの十字架上の姿において頂点に達します。自分のいのちをすべて捧げ尽くしても悔いがないほどに、イエス・キリストはあらゆる相手の行く末を案じました。その尊い姿勢は、殉教者によって受け継がれて、今日の教会共同体の基礎になっています。相手を大切したいという熱烈な想いを抱いて生きていきましょう。