2013年6月  3.荒れ野に響く「ことば」
 日本の教会から示された六月の意向は「ことばの力」です。
 現代の日本社会を見ていると、無表情で歩いている人が多いように思われます。そうかと思えば、独り言を大声で言いながら自転車に乗っている人も見かけます。先日も一人の女性が「お前なんか死んでしまえ」と大声で叫びながら歩いているのを見て、とても驚きました。今日の社会は、まさに荒野です。人は孤独で、他人を信じることができないでいます。「忙しい」競争社会の中で、人は他人を信頼できないでいるからこそ、無意識のうちに誰か信頼できる人を探しているのかも知れません。
 東日本大震災の後、人々がみな、人間関係までが壊れてしまったと思えた時、ある寺院の若い僧侶が「カフェ・デ・モンク」を開きました。夜、適当に集まって、おしゃべりをしようというのです。「しゃべりたい。だから聞いてくれる人が欲しい」。自分の悩みを聴いてほしいし、答えてほしいのです。
 マタイ福音書5章に「人間関係を大切にしなさい」というメッセージがあります。人間関係で最もつまずきとなるのが「ことば」です。「ことば」とは誠意を持って真実を語り、相手に対する尊敬の念を失わないで、自分が言ったことに責任を持つことです。そして、この条件を常に満たしているのが、キリストのみ言葉です。ですから「言葉は肉となって、わたしたちの間に宿られた」(ヨハネ1・14)とヨハネが主張するのです。
 日本の教会の意向に表現されているように「神のことばの力を受けた」私たち一人ひとりが、「人を生かすことばを語る者となりますよう」日々祈りをささげてまいりましょう。