2013年6月  4.ことばの力
 6月23日は沖縄慰霊の日である。日米戦争で唯一地上戦が行われたが、その終結の日である。沖縄の「平和の礎」の前に立ち、一人一人の刻まれた名を読む。祈ると無量の感が湧いてくる。すべての戦争犠牲者の名を一人残らず刻もうとする沖縄県人の悲願が胸に迫ってくる。終戦40年を記念して西独大統領ヴァイツゼッカーは二度と戦争を繰り返さないために、「すべての戦争犠牲者の傷みを心に刻もう」と述べたが、沖縄県人はそれをこの「平和の礎」に実現しようとしたのだ。今も毎年新しく名前が刻み込まれている。もちろん、刻まれることを拒否する家族もいる。
 慰霊の日に、じっとしゃがみ込んで祈っている人々の姿を見ると胸があつくなる。自分の縁故者の前で、その名前を呼ぶと立ち上がる気もしなくなる。夏の空はあくまでも青く、陽ざしはまぶしい。雲は白く、海は輝く。沖縄のことばに「ぬち命どぅ宝(命こそ宝)」があるが、生きていてこそ語ることが出来るのだ。この日、那覇市のカトリック小禄教会ではミサを捧げ、「平和巡礼」をする。「わたしは平和を残す」と、ミサで繰り返されるキリストの遺言こそが「日本国憲法」第9条の理念ではないだろうか。この9条を世界の遺産として守りたいと心から願っている。