2013年12月  4.無関心から関心へ
 2011年のUNAIDS(国連エイズ合同計画)の調べで、サハラ以南アフリカ地域のAIDS感染者は、2350万人です。感染者のうち女性が60%を占めています。この背景には、その地域の一夫多妻制や、生活苦からの売春、性暴力といったものがあります。ボツワナ、ウガンダ、ガーナでHIVで陽性と判明した母親が子どもたちへ宛てた「一生の贈り物」という冊子を残しています。その冊子の中で、AIDSで夫を失い、自身も免疫低下で様々な感染症に苦しみながら仕立物(縫製)で生計をたてて、3人の娘を育てる母親が、「時が経つにつれ白血球が破壊され、もっとひどい状態になったとしても、私の戦いは続きます。私の祈りと信仰をもって、私は神が与えた時まで生き続け、生き延びたい。私自身の健康を神に委ねます。」と綴っていました。愛する子どもたちを残し、この世を去らざるを得ない母親の悲痛な叫びが聞こえてくるようです。また、AIDSの悲惨さは、感染した父親や母親の苦しみだけではなく、膨大な数のAIDS孤児を生み出すことです。残された子どもは、やがて差別され、徐々に居場所を失い、結局はストリート・チルドレンとなって、町をさ迷う生活に追い込まれ苦難に遭わなくてはなりません。更に、孤児たちは胎内感染や母乳感染などで二重・三重の苦しみを味わうのです。アフリカのある国の都市のストリート・チルドレンの70%がAIDSで親を失った子どもたちだという現実があります。
 2013年9月24日、「エイズ関連死160万人」。これは、UNAIDSが発表した数値です。2012年、AIDSに関連した死者は、推計160万人で、ピークだった2005年の230万人と比べて30%も減ったというニュースです。抗ウィルス薬の普及が世界的に広まった証しでしょう。貧しい人々の中で、この抗ウィルス薬の治療を受けられるAIDS患者は、2012年の時点で約970万人に達し、1年間で20%も増加したのです。AIDS患者にとって、ほんの少し希望の明かりが見えて来ているのではないでしょうか。
 世界で初めてAIDS患者の存在が報告されてから20年以上経ちます。おそらく「HIV/AIDS」という言葉を知らない人はいないでしょう。しかし、一方で、どれほどこの「HIV/AIDS」について正確な知識を持つ人がいるでしょうか。関心を示さず、他人事と考えている人が多いのです。
 アジアの国、カンボジアにも、HIVキャリアとして育てられている子どもたちがいます。この子どもたちは親がHIV/AIDS患者で入院を余儀なくされ、親から離れて生活している子どもたちです。今まで無関心だったとすれば、これからは正しい知識を持ち、AIDSの蔓延を防ぎ、患者への偏見をなくすように努めましょう。そして、患者とその家族、特にこの病気のために親の愛情を受けられずにいる多くの子どもたちのために祈りをささげましょう。