2014年3月  1.つつまれて、という安心感
 すべての人は母親につつまれて生まれてきます。そして、成人すると、今度は子どもたちをつつむ世話役となります。
 母親は、最大限の愛情をこめて、幼子に語りかけます。毎日毎日、幼子は母親のささやきを聴きながら育ちます。愛情と言葉が一体化しているという稀有な「呼びかけ」を全身に浴びながら、人間は成長していくのです。「はじめに愛情のこもった呼びかけ(ことば)があった」というヨハネ福音書1章1節のメッセージは、まさに母子のかかわりにおいて、今日も、実現していきます。
 3月の意向には、「女性の尊重」「召命」「つながって生きる」というテーマが登場します。これらのテーマに共通している要素が「つつまれて、つつむという安心感」だと言ってもよいでしょう。私たちが女性を尊重することは、自分の人生の始まりとしての母親の胎内での日々を懐かしく思い出すことと切り離せません。つまり、女性の尊重は自分の母親に感謝することと結びつき、自分自身のいのちの始まりを誠実に受けとめることでもあるわけです。相手を尊重し、自分自身のかけがえのなさに気づくことは、それぞれの召命の確認になります。こうして、相手と自分とがつながって生きることのよろこびが実感できます。
 3月に近づくにつれて、次第に空気が和らいできます。春の訪れは、もう間近なのです。長かった冬の寒さが、ゆっくりと温かさを増しながら、私たちの心を新たに芽吹かせます。草花が生きる気力を充実させていくように、私たちもまた春の空気につつまれながら、相手をつつむことの大切さを実感するのです。「つつまれて、つつむという安心感」といういのちの感触は、「関係性を深める」という動きを伴って私たちを積極的に活かします。自分という個人的な感覚にとらわれて孤独な状態に陥ったり、自己中心的な身勝手さから抜け出せないままでもがいたりしがちな私たちは、今こそ、親やまわりの人々や自然環境をつなげながら支えている神のはたらきに気づく必要があるのでしょう。「つつむ」という言葉を大切にして、この一週間を過ごしてまいりましょう。