2014年3月  2.女性の尊重
 女性の権利と尊厳をかんがみるに、最も重要な人物は「マリア」ではないでしょうか。マリアは旧約時代と新約時代と教会の時代のすべての流れとかかわっています。言わば、全人類にとって代表者のような役割を果たしています。マリアが身をもって教えてくれたように、女性の権利とは、神とともに徹底的に歩むことであり、その歩みを真摯につづけていくことが、女性の尊厳であると言えそうです。なぜならば、女性は争いごとよりも暖かい人間関係や安心感を好み、情緒豊かな環境づくりを積極的に心がける性質をそなえているからです。神は相手を育てながら支えるという営為を常に実現しますが、女性もまた同様の営為を成し遂げます。
 神は、あらゆる相手を自分の子どもとして受け容れつつ支えます。鳥がひなたちを翼の下にかくまって温めるように。暖かさに敏感な女性たちは「神の愛のぬくもり」の意味を本能的に知っているばかりか、自らも他者に対して丁寧に接することで暖かさを分かち合おうと心がけます。
 ところが、私たちは神からたくさんの支えを受けていながらも、その恩を忘れ、まるで自力で成長したかのように傲慢な態度を平気でとってしまいます。同様に、私たちは母親をはじめとして周囲の女性たちから受けた恩を忘れています。相手から受けた良質な支えを、ありのままに記憶しつづけることが重要です。相手のふるまいを忘れないときに、私たちは神の子どもとして生きていくことができます。そして、母親をはじめとする女性たちの想いを尊重することができます。
 3月は、子どもたちにとって学校教育現場の年度末にあたります。子どもたちが無事に成長していけるように、と常に願っているのが母親です。女性の尊厳を思い起こすときに、世の中の女性たち一人ひとりが果たしてきた「子どもを大切に守る姿勢」をも私たちの心の底に思い描き、感謝したいものです。女性と子どもは、母子関係において切り離せないほどの密接な協働作業を成し遂げます。新約聖書を読み返すことで、聖母マリアとイエスの心の一致と協調関係を眺めれば一目瞭然です。そして、男性たちには、女性と子どもが安心して生きていけるような社会体制づくりを成し遂げる責任があります。ヨゼフが、まさに聖母子を守る役目を果たしたように、現代の男性にも女性や子どもを支える使命があります。女性の尊重は子どもの成長にも結ぶつくのであり、聖家族の形成に至るのです。
 こうして、教皇フランシスコが今年「家庭」をテーマとする世界代表司教会議を企画した意図も理解できます。女性の尊重を心に留めて、この一週間を過ごしてまいりましょう。