2014年9月  2.原発事故からの避難者
 原発事故で放出された大量の放射性物質(自然状態では地球に存在しないが、高い熱を生じさせるために人為的に原子核分裂を起こした結果生まれてきた不安定な原子核で、放射線を放出しながら安定した原子核になろうとする物質、たとえばセシウム137)は、風に乗ってさまざまな地域に拡散しました。地震と津波が、未曾有の災害であると同じように、福島第一原子力発電所の事故は、人類がこれまで一度も経験したことのない、まさに「未だ曾て有らず(いまだかつてあらず)」の出来事だったのです。
 拡散した放射性物質から出る放射線と、半減期といわれている期間、つまり、放射線を出すパワーが半分になる期間が、放射性物質によって異なります。たとえばヨウ素131は半減期が8日ですが、強い放射線を出しています。一方、炭素14は、半減期が5730年と長大ですが、弱い放射線をじわじわと出し続けます。「半減期」ということは、半分になる期間で、2分の1が4分の1になり、4分の1が、8分の1になっていくだけで、永遠になくなることはないことだと認識しなければならないでしょう。
 いま、原子核分裂で生じた放射性物資から出る放射線のことについて基礎的な知識を確認しました。このような性質をもった物質が、各地に飛散してしまったのです。その多くは、地表や側溝の淀みなどに留まっているということで、地面を5センチメートル削ったり、側溝の泥を集めたりして袋に詰め、除染といわれる作業が行われたのです。言ってみれば、単に場所を移動しただけで、放射性物質は放射線を出し続けていることには変わりがないのです。そして、削り取られたりした土が、大きな黒いビニールに袋詰めされて、あちこちに山積みされていました。この8月に進展がありました。野ざらしにされている除染した物質を中間所蔵する候補地が決まろうとしています。放射線を出す物質が高い濃度の土砂を、一時的に埋設しておく「中間貯蔵施設」が福島県の大熊町及び双葉町に決まりそうなのです。
 大熊町と双葉町から非難されている方々の心に、どんな思いがわき上がっているでしょうか。大熊町及び双葉町に中間貯蔵施設が建設されれば、もうそこに戻って以前のような生活が、永遠にできない事態になるかもしれません。
 日本の教会は今年の9月、防災の意識を高めるべきこの時に、原発事故によってそれまで住んでいた家を離れて暮らさなければならなくなった方々の心に重ねて、「移住移動者」を意向として取り上げました。「教会が、故郷を離れて生活する方々の居場所となりますように」祈りながら、また、実際にそのような場として教会を差し出すことができるように、この1週間の祈りを捧げてまいりましょう。