2014年10月  3.世界宣教の日
 福音宣教の意向をていねいに読んでみましょう。「全世界に福音を運ぶ」とあります。これはもちろん、「御国のこの福音はあらゆる民への証しとして、全世界に宣べ伝えられる」(マタイ24・14)で示されていて、「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16・15)のイエスの派遣のことばに裏付けされています。
 注目したいのは、キリストは、わたしの教え、イエス・キリストの教えを伝えるとは言ってはいないということです。ですから、世界宣教の日にあたっては、わたしたちはキリスト教を宣教するのではなく、福音、つまりすべての人が互いに尊敬し合い、たとえ敵と味方という関係であってもその人のいのちを認め合う「新しい掟」に従って生活すると、人びとに真の平和が訪れるという「よき知らせ」を、全世界に向けて宣べ伝えるように、促されているのでしょう。
 全世界には、さまざまな宗教や文化、習俗習慣があります。生活の中で福音の心を持って生きようとする人びとが、それを達成するための教えとして、キリスト教を宗教組織に統合しました。第二バチカン公会議を経て、「教会の外に救いはない」という教えが間違っていたことを宣言したカトリック教会は、福音に生きることの大切さを、宗教の枠を超えて、全世界に発信していくことが、真に求められているように思います。実際、イエスはユダヤ教とでありながら、福音の新しい掟をもってユダヤ教を超えたとも言うことができます。
 いのちを大切にしない、福音に反する悪の誘(いざな)いが、世界中に拡がっている現代社会にあって、世界宣教の日を機として、宗教の枠を超えて全世界に「福音」を宣べ伝えてまいりましょう。またそのために働く多くの人びとと心を合わせて、真の平和が訪れますようにと、祈ってまいりましょう。