2014年10月  4.宗教の違いを超えて
 日本の教会は意向として「諸宗教対話」を掲げています。
 カトリックの信徒数は40万人強で全人口の1パーセントにも満たない小さな羊の群れです。文部科学省の統計によると、神道系は約1億人、仏教系は約8,500万人、キリスト教系は200万人弱、諸派が900万人強で、信仰者の全体は2億人弱に上る数字となっています。神道と仏教への2重帰属、つまり神社の氏子であると同時に菩提寺の檀家であるという形態は日本人にとって一般的です。ですから、信仰者の全体数が日本人の総人口の2倍近くになってしまうのです。
 ところで、小さな羊の群れであるキリスト教会が、平和、正義の推進、災害からの復興、貧困に苦しむ若者の支援などの活動を行っていくには、他の宗教を信奉している方々との協力が欠かせないことは、自明のことです。実際に、東日本大震災の復興支援のためカトリック教会がカリタスジャパンのもとで活動している各地のベース(救援基地)では、カトリック教会の信徒ではないさまざまなボランティアがともに活動していますし、キリスト教の他の教派や、仏教、神道の方々との交流も盛んです。活動や運動の現場ではすでに、諸宗教の間で、具体的な協力が行われているのです。
 今月の3つの意向を説明した「10月の意向」のページでは、「寛容」の大切さが説かれています。悪に対して寛容になることは、決して陥ってはならないことですが、善意の人びとの行いに対しては、教義や信仰対象が異なっているからと言って、否定することはできないのです。諸宗教がともに手を携えて、苦しんでいる人びととともに歩んでいくためには、寛容であるか不寛容であるかは、いま信仰を持つすべての人に与えられている、きわめて今日的な課題なのです。
 福音はすべての人に及びます。ともに活動するすべての人の中に、その福音の光を見いだしながら、日々を重ねてまいりましょう。