2015年1月  1.平和
 クリスマス、そして、イエスとマリアとヨセフの聖なる家族を祝う典礼を祝うと、新しい年が訪れます。1月1日は「神の母聖マリア」の祭日で、同時にカトリック教会では「世界平和の日」となっています。年の初めにあったって、世界が平和でありますようにと祈ることは、なんと素晴らしいことでしょう。祈りは決して無駄にはなりません。祈りの力は必ず平和をもたらす原動力になります。なぜならば、祈りは、自分の思いを相手の心に重ね合わせて、その安寧を願うことに他ならないからです。
 一方で、なぜ、平和を築くことが難しいのかについて、深く考えることも大切です。つまるところ、紛争や戦争の原因は、貧困と飢餓に帰結するのでしょう。飢餓と貧困を撲滅することが、平和への道の始まりなのでしょう。では、なぜ貧困が生まれるのでしょうか。それは私たち人類が、持っているもの、いただいたものを分かち合う知恵を持っていないからです。大地の恵み、労働の実りを、また富や財産を分配する公平な仕組みを、持っていないから、富の格差が生まれ、今日の経済のしくみの本質から、その格差はどんどん広がっていくのです。昨年の12月に日本語に翻訳されて出版された『21世紀の資本(トマ・ピケティ著)』」では、産業革命以降、貧富の格差が是正されたのは、残念ながら二つの世界大戦の後の社会の混乱の時期だけであって、そのほかのいずれの時代にも格差は拡大していて、この傾向は21世紀もずっと続いていくことを経済学の立場から明らかにしています。そしてこれを解決する方法は、資本に課税することだとされていますが、それを実現することは非常に困難なことだとも記されています。
 経済の法則を超えるのは、カリタス、つまり愛の法則にほかなりません。平和を実現する愛の法則が、経済の法則を超えて、貧困と飢餓の撲滅、平和の実現に貢献できるように、日々祈りをささげて、新年をスタートいたしましょう。