2015年4月  2.ワーキングプア
 真面目に働いても、生活するための最低限の賃金も得られず、人間らしい生活ができないでいる労働者をさして、20世紀の初め頃から「ワーキングプア」と呼ばれるようになりました。それまで、貧困は失業と関連づけられて語られていたのですが、雇用が継続していても労働に対する正当な対価を得ることができない、新たなかたちでの貧困として、社会問題となったのです。
 失業率も深刻な状態です。日本の場合、今年の2月の速報値では3.5%と、国際的に比較すると非常に低い数値となっています。2013年の統計では、世界で最も失業率が高い国はマケドニアで、なんと30.02%にも昇っています。次に高い国はギリシャで27.25%、次いでボスニア・ヘルツェゴビナで27.00%、スペインで26.10%となっていて、労働者の4人に1人が失業している深刻な事態となっているのです。
 失業もワーキングプアも、その影響が若者たちに及んでいる点を見逃すわけ人はいきません。若者の多くが、人生の意義や目標を失い、その結果としてカルト集団や過激派組織に新しい可能性を託すような、非常にまずい状況が生まれてきています。
 経済のグローバル化と格差の拡大とも関連しますが、経済活動によるひずみの原因は、社会的機会の不平等と、富の分配における不正義にあることは、まちがいのないことです。原因が分かっていながら改善できないのは、残念なことに人は誰でも自分の不利益を好まないからなのです。分かち合う、シェアすることで、経済的な不利益を超えて、心の安らぎや平和といった、人間にとって欠くことのできないものが得られることを、知らないのです。
 自分の勤務時間を減らして失業者に就労の機会を与えようとする施策を、ワーク・シェアリングと言います。30年ほど前からドイツの労働組合などは、経営側と協議して、この施策を推進しています。「仕事の分かち合い」そのものです。
 日本の教会の意向は、若者の就労によって人間の尊厳を失わないように祈ることを呼びかけています。仕事も分かち合い、成果や報酬や富を分かち合うといった、キリスト者としての原点に立ち返れば、若者の将来を明るくすることができるのではないでしょうか。
 復活の主とともに、仕事も分かち合う社会環境を整えてまいりましょう。