2015年6月  1.難民認定はわずか11人
 世界各地で、紛争や災害によって暮らしを奪われ、それまでの生活を維持することができなくなった人々は、いのちをつなぐために新しい環境に移り住んでの苦しい生活を余儀なくされています。現在その数は、5000万人を超えるほどになっています。特に、IS(「イスラム国」)によって、中東の紛争が激化している今日、シリアやイラクで新たな難民がたくさん生まれている事実には、とても心が痛みます。
 自国で生活することができない難民を、国際社会の中でどのように支えていくかを考えて、第二次世界大戦の後の1951年に、国連で「難民の地位に関する条約」が採択されました。その後も紛争が多発して新たな難民がたくさん生まれたので、1966年に「難民の地位に関する議定書」が条約を補完するために作成され、この二つを合わせて一般的に「難民条約」と呼ばれています。
 この条約に基づいて、国際的な活動を行っている機関が国連難民高等弁務官事務所です。日本語でもウェブサイトが閲覧できますが、そこには「難民とは何か」について、次のように書いてあります。
 「1951年の『難民の地位に関する条約』では、『人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた』人々と定義されている。今日、難民とは、政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指すようになっている。 また、紛争などによって住み慣れた家を追われたが、国内にとどまっているかあるいは国境を越えずに避難生活を送っている『国内避難民』も近年増加している。このような人々も、難民と同様に外部からの援助なしには生活できない。適切な援助が実施できなかった場合、これらの人々は国境を越えて難民となり、結局、受け入れ国の政府や国際社会は、より重い負担を強いられることになってしまう。」
 さて、表題の「11人」ですが、国を離れて日本移住して、2014年に日本政府に難民の認定を申請した人約5000人の中で、難民として認定された人の数です。この数字が発表されたときに、世界のマスコミはこぞって日本の難民政策を批判しました。日本政府は、「自国にいると迫害を受ける」かどうかを厳格に審査していると弁明しています。また、就労のために難民であることを偽装しているケースも非常に多いと言っています。
 この結果は、日本の労働市場から外国籍の人を排除するという入国管理政策の根幹に、大きく関係しています。経済が優先で、人道が後回し人っていることの現れとして、受け止めなければなりません。因みに、移民・難民政策を大転換したドイツは、同じ年に10万人以上の難民を受け入れています。
 6月の教皇の世界共通の意向は、「移民・難民」です。日本に暮らすキリスト者として、日本の難民政策が大転換されることを願い求めてまいりましょう。