2015年7月  2.貧困と格差のラテンアメリカ
 今、世界では、1日1ドル以下で生活する極貧層が10億人いるといわれています。一方、では、年間所得が50億ドルを超える高額所得者も存在しています。これを1日の所得に換算すると、1370万ドルになり、その格差は言わずもがな1370万倍なのです。所得分配の不平等の実態は「世界の最も富裕な500人は、最も貧しい4億1600万人の所得を合わせたよりも多くの所得を得ている。こうした極端な事例に加えて、世界の人口の40%を占める1日2ドル未満で生活している25億人の所得は、世界全体の所得の5%にすぎない。最富裕層10%は、ほぼ全員が高所得国で暮らしているが、この層が世界全体の所得の54%を占めている」とUNDP国連開発計画の『人間開発報告書』)に記載されています。実に、極めて不平等な状況が存在していて、この格差社会の現実は、私たちがはっきりと受け止めなければならない事実です。
 高所得国とは、世界銀行が定めた基準で、1人あたりのGNI(国民総所得)が1万2600ドル以上の国を指します。日本は、2013年の統計で世界の第31位に位置して、その額は3万9947ドルでした。因みに第1位はモナコで17万3377ドル、統計に示された213の国と地域の中での最下位は、アフリカのソマリアで128ドルです。ソマリアでは1日1人あたり35セントにすぎませんが、モナコでは475ドルで、格差は、1300倍を超えるのです。
 ラテンアメリカでも、貧困は深刻な社会問題で、特にハイチ、ニカラグア、ホンジュラス、ボリビア、グアテマラでは、1人あたりのGNIが10ドル以下で、中でもホンジェラスは人口の半数以上が極貧困層という現実におかれています。
 日本からはちょうど地球の裏側に位置するラテンアメリカ諸国は、私たちの関心から遠い存在ですが、アフリカやアジアと同じように貧困が蔓延していて、その格差は改善されていません。2000年に国連ミレニアム宣言が提唱され、2015年までに貧困を改善する具体的な貧困軽減目標が定められました。それは、1)極度の貧困と飢餓の撲滅、2)普遍的初等教育の達成、3)ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、4)幼児死亡率の削減、5)妊産婦の健康の改善、6)HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、7)環境の持続可能性の確保、8)開発のためのグローバル・パートナーシップ、の8項目でしたが、今年が目標達成年の2015年であるにもかかわらず、依然として貧困とそれによる生活苦は改善されず、人間らしい生活を保障されていない人がたくさん暮らしているのです。
 教皇の7月の意向でラテンアメリカの貧困についての祈りが示されています。教皇フランシスコがラテンアメリカのアルゼンチン出身であることに思いを致しながら、貧困の撲滅のために一人ひとりができることは何なのかを考え、生活の中でのささいな行動の積み重ねで、一歩一歩この人類全体に課せられた難題の解決に向けて、ともに歩んでまいりましょう。