2015年9月  1.若者の失業
 教皇は9月の意向で、若者の教育の機会と就業の機会がますます増えるように祈ることを勧めています。教育は、私たちが次世代のために行う最大の投資です。ですから、自分の子ども、自分の家族、自分の親戚の枠を超えて、また、日本やアジアといった地域の枠を超えて、さらには、病気や障がいをもっているか、健康であるかといった身体的な違いの枠を超えて、いのちをいただいたすべての子どもたち、若者たちが、均等に教育を受ける機会を与えられることが、切に求められています。日本国憲法は、教育の機会均等をうたっていますので、原則的にはすべての子どもたちが平等な教育を受けていることになるのですが、実際には、貧困に苦しむ家庭の子どもたちや、障がいを持っているために差別や偏見によって、いわゆるいじめを受けている子どもたちなど、解決しなければならない課題も山積しています。
 就業の機会についても、課題があります。日本経済の国際競争力を強化するために、かつての終身雇用制度は崩壊し、労働力の余剰と欠乏を調整しやすい非正規の雇用が進みました。その結果、自分が望む職業に就くことが難しくなったばかりか、いつ自分の仕事がなくなってしまうかわからない不安な状況に、若者たちは置かれています。日本の若者の失業率はリーマンショック後に10パーセントを上回ったものの、今では6パーセント台に落ち着いています。それでも、全体の失業率に比べれば、若い人たちほどその率は高くなる傾向は変わりません。
 世界に目を広げてみると、ヨーロッパ諸国で高い失業率がみられます。国の経済が苦しいスペインでは、国全体で4人に1人が失業している厳しい状況の中で、若者の失業率が60パーセントを超える状況にもなっています。スペインばかりではなく、他のヨーロッパ諸国でも若者の失業は深刻な問題で、若者たちが希望を失い、過激な思想に走るきっかけとなっています。
 今の経済学をもって、失業をなくすことは不可能だといわれています。経済の論理ではない別の仕組みが必要なのでしょう。それは、分かち合いの仕組みです。仕事も分かち合うことが必要なのです。
 この一週間、経済の動向に気を配りながら、それを超える新しい道が開けるように、祈りをささげてまいりましょう。