2015年9月  3.高齢者の尊厳
 65歳以上の高齢者人口は3186万人(2013年9月現在)で、総人口に占める割合は25.0%となりました。推移を見ると、昭和60年に10%を超え、20年後の平成17年には20%を超え、その8年後の25年に、初めて4人に1人が高齢者となりました。前年よりも112万人増加していて、この傾向は今後も続くことが予想されています。人口の比率も、過去最高を示しています。男女別にみると、男性は1369万人(男性人口の22.1%)、女性は1818万人(女性人口の27.8%)と、女性が男性より449万人多くなっています。
 加齢に伴って、それまで何の不自由もなく自分でできていたことが、少しずつ苦手になり、やがてできなくなり、他の人の世話を受けなければ生活が整わなくなっていきます。身体的な機能ばかりか、脳の活動も衰えてきます。状況が認識できなくなったり、記憶が定かでなくなったり、会話が難しくなるなど、不自由さはいっそう顕著になります。そうした傾向が表れる年齢が65歳前後ですので、他の人の世話を受ける人が4人に1人になるという現実が突きつけられていることを、認識しておかなければなりません。
 ところで、日本には、他の人に迷惑をかけないことを美徳の一つとする文化があります。わざわざ迷惑をかけるのはもってのほかですが、誰かに迷惑をかけないで生きることはできないのではないでしょうか。その文化の中にあって、世話になることも避けるような傾向が生まれてきて、誰かの世話になることがいけないことのように思う人が、実にたくさんいるのです。
 世話になる側が遠慮するのは、世話をする側が「そんなことありませんよ」「大丈夫ですよ」と支えて差し上げれば良いのですが、世話をする側にもこの日本的な文化が染みついていると、高齢者の尊厳が脅かされることになりかねません。「自分で何もできないのは迷惑なこと」「助けてもらっていることをありがたく思え」などの考えがエスカレートすると、高齢者への虐待に発展してしまうのです。
 他の人に迷惑をかけないことが美徳とされる文化の中で、高齢者の人間の尊厳が奪われることがないように、誰もが互いの弱さを補い合って、支え合って生きていくことが美徳とされるイエスの教えを、たくさんの人に伝えていくことができるように心がけて、この一週間を過ごしてまいりましょう。