2015年10月  1.子どもの人身売買
 人間が金銭的な取引の対象となって売り買いされているという実態が、今この21世紀でも行われています。ところが、その防止策も、実態の解明も、統計も、はっきりしません。世界のあらゆる国で犯罪行為とされているこの人身売買は、すべてが水面下で取引されているので、なかなか発覚しないのです。しかし、この犠牲者の中に、乳児や幼児を含めた子どもたちが存在していることは間違いないとされています。
 そもそも人身売買とは、目的、方法、行為という三つの構成要素で規定されます。目的には、売春及びその他の性的搾取、搾取的労働、強制的な労働やサービス、奴隷やそれに類似する行為及び労働、臓器の摘出及び売買があげられます。行為には、人身の獲得、輸送や移動、引き渡し、隠匿等のかくまう行為、受け取りがあり、方法には、暴力やその他の強制力の使用及びそれによる脅迫、誘拐、詐欺及び策略、権力の濫用や他者の脆弱な立場の利用、そして、他者を支配下に置く人間の同意を得る目的での利益の授受があります。犯罪としての人身売買は、この目的、方法、行為の組み合わせで、具体的な人身売買の具体的な形態が発生します。売春を目的として、強制的な方法によってある人を引き渡す一連の行為が、人身売買の一つの実態なのです。実際には、ある一人の人間に対してさまざまな段階でさまざまな形態の人身売買がなされますので、また、一人の人間が次々と売買されていくこともあって、その実態を数値で表すことが難しいのです。
 諸機関が発表する統計にも違いがあります。国際労働機関(ILO)の2005年に、年間100万人ほどの子どもが人身売買の末に強制的労働を強いられていると推計しました。
 アメリカ国務省は、年間60万人から80万人の人々が国境を越えて人身売買され、その半数が子どもだと発表しています。
 たった一人でも、人身売買の犠牲にしてはなりません。北朝鮮による拉致が日本のジャーナリズムに取り上げられていますが、その卑劣さと変わらぬ行為は今も行われているのです。私たち一人ひとりが、この人身売買という犯罪にどのように立ち向かっていくことが求められるか、真剣に考え、こころを合わせて祈る一週間といたしましょう。