2015年12月  3.イエスは家庭に生まれ出でた
 教皇の福音宣教の意向は「家庭」です。今、クリスマスを前にして、イエスがマリアに宿り、マリアとヨセフとの聖なる家庭に生まれ出(い)でたことを、思い巡らしてみましょう。
 イエスの誕生は、人類にとってたいへんな出来事でしたが、マリアとヨセフにとっても多難な出来事だったに違いありません。旅の途中のベツレヘムでの出産や1歳の男児を皆殺しにするヘロデ王の悪政から逃れてエジプトに逃避したことも、苦しみと痛みを伴うものだったでしょう。しかし、私たちのいつくしみ深い神は、その家族を守り、支え励まして生かし、赤子のイエス、幼児のイエス、子どものイエス、少年イエスと、家庭の中で育(はぐく)んでくださったのです。
 今、たくさんの家族が、苦しみに中に暮らしています。私たちが真っ先に心を重ねて祈りをささげるべき状況に置かれている家族は、戦闘下で恐怖のうちに暮らしている人々、その状況から逃れて、難民となって不安定な毎日を送っている人々でしょう。
 また、貧困のために子どもたちに充分な食物を与えることができない家族もたくさんいます。この状況は何もアフリカやアジアの貧しい地域の話ではなく、今この日本の大都会でも起きています。また、家庭の中に愛の絆を見いだすことができずに苦しんでいる方々のことも、心を痛めます。特に、愛された体験をすることができない子どもたちに、暖かい家庭が与えられますようにと祈るばかりです。
 イエスは、マリアとヨセフの愛の絆の中に生まれ出でました。苦しみの中にあっても、希望を失わずに神への信頼の中に生きるマリアとヨセフの家庭の中に生まれ出でました。神が私たちの救いのために送ってくださったイエスが、マリアの胎内で育ち、聖なる家庭の中で育まれていったことを思い、主のご降誕を準備致しましょう。