2016年1月  2.自立・自律
 「他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること」を「自立」いう言葉で表します。私たちが成長して大人になっていく過程で、この「自立」はとても大切な一つの目標として掲げられています。音読みで同じ言葉に、「自律」があります。これは「他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること」で、より精神的な意味を含んでいますが、「他の助けを借りずに」という意味では、共通しています。
 私たちが受ける教育は、「自立・自律」することができるように、さまざまな知識や能力を身につけて行くことを一つの目標としています。例えば、語学の能力を高めることができれば、通訳やガイドに頼ることなく、つまり、他の助けを借りることなく外国を旅行することができるようになりますし、料理のレシピの幅を増やすことができれば、いつでも美味しいものを食べることができるようになります。1月11日の成人の日を迎えるにあたって、多くの若者たちが、一日も早く「自立・自律」することができるように、祈り支えてまいりたいと思います。
 このように「自立・自律」は、人が成長する過程において大きな目標となりますが、何のために「自立」したり「自律」したりするのかを、はっきりと意識しておくことは、とても大切です。成長の目標にすることはいいのですが、さまざまな理由によって「自立」すること、「自律」することができない人も、神から愛された一人の人間としてこの世に存在しているのです。逆に表現すれば、この世で生きている人々のうち、誰一人として「完全」に自立・自律している人はいないということになります。ということは、「自立・自律」の究極的な目標は、自分のためではなく、自分が身につけた能力を他の人のために喜んで差し出すことができるようになるため、と言えるのではないでしょうか。
 「新成人のために」という今月の意向の中で、日本の司教団は「孤立することなく、さまざまな人々の交わりの中で成長しますように」と、私たちを祈りに招いています。交わりは、互いに支え合うこと、互いに自分が身につけた能力を分かち合って、ともに生きていくことの中に生まれます。自立・自律した後に孤立するようなことがないように、新成人、そして若者たちが、共同体の豊かさの中に育まれますようにと、祈ってまいりましょう。