2016年3月  1.中から崩れていく家庭
 教皇フランシスコが掲げた今月の世界共通の意向は、「困難な状況にある家庭」です。家庭は生命を誕生させ、子どもを育(はぐく)み、養い育てて、人類の営みを次世代に伝えていく時の最も礎(いしずえ)になるところです。しかし、戦争や紛争、あるいは災害などで、家族を失ったり住む場所を失ったりして、その家庭が危機に瀕(ひん)しているニュースがたくさん届けられています。まず、このような状況にある家庭と、そこで暮らすこどもたちのために、祈りをささげましょう。
 家庭の危機は、災害や戦争・紛争などでもたらされるばかりではありません。同じ外的要因であっても、父親の勤めていた会社が倒産して経済的に行き詰まってしまうこともありますし、子どもが難病にかかり、生活に無理がかかってしまうようなこともあるでしょう。さらに考察を進めると、困難な状況にある家庭となってしまう要因が、家庭の中にも存在していることが分かります。
 まず、新しい家庭は夫と妻が築き上げていきます。夫や妻が育った家庭、つまりそれぞれの親兄弟の生活の場から離れて、新たに家庭を創造する営みが始まるのです。結婚というその社会の文化に根ざした儀礼を通して、そして婚姻という法的な手続きを経て、社会的にも法律的にも新しい家庭がスタートするのです。ところがこのようにして誕生した新しい家庭が存続する割合が、今日の社会であまりにも低いのです。
 厚生労働省発表の2015年(平成27年)人口動態統計の年間推計によると、婚姻の数は635,000組で前年より9,000組減少し、一方、離婚の数は225,000組で前年より3,000組み増加しています。離婚率は人口千人に対しての数値を算出するので、その値は1.80と推計され、あまり大きな数値ではないと錯覚しますが、婚姻数と離婚数を見てみれば婚姻の3分の以上の離婚が日本の社会で起きていることが分かります。その年に結婚した人がその年に離婚する数値ではないので、何年間結婚生活が続いたのかをこの数値から読み取ることはできませんが、離婚はとても多いと言わざるを得ません。
 離婚の原因はさまざまです。互いの人格が尊重されることが叶わないなら、やむを得ないことかもしれません。しかし、家庭は、冒頭に記述したように、生命の誕生の神秘が営まれるところなのです。私たち人類にとって、とても大切なのです。それが中から崩されていく「離婚」ということに、私たちはきちんと目を向けて、夫と妻が心も体も健やかに生活できる手助けを行いながら、次の世代にいのちをつないで参りたいと願うのです。
 家庭がその中から崩れていくことがないように、祈りをささげる一週間といたしましょう。