2016年3月  2.また3月11日が巡ってきます
 東日本大震災の未曾有の大惨事から5年が経過しようとしています。生命をいただいて、この世で今の時を生きている私たちは、何を願い、何を祈り、そして何をしなければならないのでしょうか。自分の日々の心がけが、いつも神の望みの方向に重なり合うものであるかどうかを確認しながら、震災と津波、原発事故を経験した今、私が果たすべき事柄を明確に導き出すことができるように、この一週間を過ごして参りましょう。
 何よりもまず、尊い生命を奪われた2万人あまりの人々の、一人ひとりの鎮魂を、全能の神への深い信頼のうちに、祈り願うことから始めましょう。死に至る時間の流れの中で、恐怖、傷み、苦しみ、絶望を抱きながら、無念にも生命を閉じた一人ひとりの思いに、自分の心を重ねて味わってみましょう。そして、今は神の懐(ふところ)で憩いの時を過ごしていることを信じて、すべてを神に委ねましょう。
 第2のポイントは、痛手を負った人々が、また痛手を負った地域社会が、元気を取り戻すことができるように祈ることです。特に愛する人を失った人々の心の安寧を願いましょう。写真や動画で、被災の様子が手に取るように伝わってきます。時は戻りません。一人ひとりができることを、心を尽くして行い、すべてを神に委ねて参りましょう。カトリック教会が今も続けて設定している8つのベース(ボランティア拠点)と仙台教区サポートセンターからの情報から、一人ひとりにできることを見つけることができるでしょう。
 第3のポイントは、いつ起こるか分からない未曾有の出来事に対して、手を抜くことなく「備え」を行っておくことです。いつどこで起こるか分かりませんが、できる限り自分の生命を守りましょう。もし生命を失えば、決して誰かを助けることができないのです。耐震建築、家具転倒防止、保存食、飲料水、避難袋など、モノの備えも大切ですが、避難路、連絡手段などの情報も集めておきましょう。また、忘れがちなのは人のネットワークです。隣に住んでいる人と一度も挨拶を交わしたことがないのならば、防災上極めて危険だと言わざるを得ません。人間関係の構築も防災上大切なのです。私たち一人ひとりが5年前の辛い経験を智恵に変えていかなければなりません。
 祈った時に、思った時に、行動に まで進みましょう。明日、いや、この数秒後に起こるかもしれない未曾有の出来事に、一刻も早く備えをしておきましょう。