2016年4月  2.大規模農場と小規模農家
 土を耕し、穀物や野菜や果実を育て、それを収穫する営みは、人類が移住しながら狩猟生活から定住するようになった2万年ほど前にさかのぼります。収穫は、1年間の植物のリズムの中で営まれますので、長い月日をかけての細かな営みが日々行われ、その結果として豊かな実りがもたらされます。言うまでもなくこうした農耕を営むためには、豊かな大地が必要となります。今日のように、ビルの中で、電気の照明の下で栄養を加えた水を用いて野菜作りが行われるようになって状況は大きく変わってきていますが、もともと土地は生産手段の重要な要素です。そして、自ずとそのことは土地所有の仕組みと大きくかかわっています。
 今日のように、資本主義経済のもとで民主的な政治が行われる以前は、土地は豪族や貴族、領主のものでした。その時代の既得権益を継承し、今でもアジア・アフリカ、そして南アフリカでは、少数の金持ちが広大な土地を所有している状態が続けられて、その土地で大規模な農場(プランテーション)が行われています。封建時代に小作人として働いていた農夫や奴隷は、狭い土地を分け与えられましたが、それは経済活動として農業を行うには充分だとは言えません。
 さて、教皇の4月の世界共通の意向は、小規模農家の人々のためにとなっています。我が国は、第二次世界大戦の後に農地改革が行われ、小規模の農家が経済的に自律できる仕組みができあがりました。その結果、日本の農家の8割が小規模農家であって、そのことは日本の農業経済にプラスに作用しています。ですから、教皇の意向で小規模農家が取り上げられても、その重大さや緊急性が実感できませんが、世界規模で見ると前述の小規模農家の救済は、急務の一つなのでしょう。小規模農家の貴重な労働に対して、経済的に正当な対価が支払われるように、世界の教会と心を合わせて祈ってまいりましょう。