2016年4月  3.アフリカの宗教事情
 教皇は今月の福音宣教の意向として「アフリカのキリスト者」を取り上げて、「アフリカに暮らすキリスト者が、政治的・宗教的紛争のただ中にあっても、イエス・キリストへの愛と信仰を証しすることができますように」と世界の教会が心を合わせて祈るように勧めています。私たちのアジア、それも日本のような極東アジアからは遠く離れたアフリカの事情については、日常的に関心を寄せるこることが少ないのが実情でしょう。そこで、アフリカの宗教事情を概観してみましょう。
 この意向が掲げられるようになった背景にある大きな政治的宗教的紛争は、ナイジェリアを中心に行われたイスラム教過激派集団「ボコ・ハラム」による教会襲撃や、生徒拉致事件です。中東のアルカイーダと連携していて、2015年にはISIL(過激派組織「イスラム国」)に忠誠を誓っているこのナイジェリアの「ボコ・ハラム」は、キリスト教だけでなく、西洋式の教育や文明を否定し、また、自らが主張する過激思想を受け入れないムスリム(イスラム教徒)をも攻撃の対象としています。
 アフリカばかりでなく中東、ひいてはヨーロッパの各地で、過激派集団によるテロが頻発すると、イスラム教徒はみな過激で危険だという印象をもってしまいがちですが、「ボコ・ハラム」そしてISILは宗教の名のもとに自らを正当化している武装過激派集団であると認識すべきです。私たちは、その活動を見て、彼らが主張するイスラム教が、またそれを信じるムスリムが暴力的な反政府・反社会活動の温床だと思ってしまいますが、それは間違いです。考慮すべきは、イスラム教を利用し、自爆テロを聖戦だと主張する過激派の存在なのです。
 キリスト教とイスラム教が互いの信仰を認め合いながら共存しているのが日常見受けられる自然な姿です。何かの衝突が起きると、宗教の影が見え隠れするように感じられるのですが、例えばビアフラ戦争のように、実際は民族や部族の対立抗争だったり、植民地主義への反発からの闘争だったりすることが多いのではないでしょうか。
 アフリカで信者数が一番多いのはキリスト教で、歴史的には、1世紀に北アフリカに、4世紀にスーダンとエチオピアに広まりました。エチオピアではコプト教会を通じてキリスト教が生きのびましたが、他の地域はイスラム教に変わりました。15世紀にヨーロッパによる植民地支配が始まり、それとともにキリスト教が再び広まりました。今日、プロテスタントとカトリックはほぼ半々となっています。イスラム教はアフリカで2番目に信者の多い宗教です。7世紀に北アフリカで布教され、その後、東アフリカ海岸と西アフリカの内陸部に広がり、20世紀になって植民地支配が終わり独立が進むと、さらに残りの地域に拡大しました。私たちに課せられた課題は、信仰を異にする人々と築く平和です。キリスト教とイスラム教とがアフリカに広く浸透している現実を受け止め、日々互いを尊敬しながら、平和を築いていくことができるように、祈りをささげてまいりましょう。また、人々を過激な思想に追い込むこの社会の現実が、一日も早く緩和されて、人々の心がおだやかになるようにと祈ってまいりましょう。