2016年5月  3.七十二人の集い
 厚生労働省は「ひきこもり」について、「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」と定義づけています。また、「時々は買い物などで外出することもあるという場合も『ひきこもり』に含める」としています。その「ひきこもり」の当事者に対する理解が深まり、人と人との交わりの豊かさを伝える支援を、日本の教会は5月の意向として取り上げています。
 「ひきこもり」は、単一の疾患や障害の概念ではありません。そして、その実態は多種多彩です。生物学的要因が強く関与している場合もありますし、明確な疾患や障害の存在が考えられない場合もあります。気分が落ち込んだり、人と会いたくなかったりすることは誰にでも起こりうることですが、「ひきこもり」は、その状態が長期化することが一つの特徴です。そして、自宅に長期間ひきこもった状況から、再び社会との交わりを回復するためには、想像できないほど大きなエネルギーが必要となるのです。
 「ひきこもり」の正確な人数を示す統計データは存在しませんが、平成22年に15〜39歳の年齢層を対象として内閣府の行った調査によると、自室からほとんど出ないケースからコンビニくらいしか外出しないケースまでの「狭義のひきこもり」が約23万人、趣味の用事の時だけは外出する「準ひきこもり」が約46万人と推計されました。両者を合わせると実に約70万人ものひきこもりの若者が存在するという結果になります。
 これほど多くの人が社会との交わりから遠ざかって生活していますが、その一人ひとりは周囲の方々の暖かく優しい支援を必要としています。長期的な「ひきこもり」になってしまう原因には、生物学的側面も、心理的側面も、また社会的側面も複雑に絡み合っていますが、何よりも当事者の心の思いを受け止めて、ともに歩んでいくことが求められています。
 「5月の意向」でも紹介しましたが、カトリック教会では、20歳の時に「ひきこもり」の生活で4年近くを過ごした修道士(ブラザー)が中心となって、「七十二人の集い」という活動が展開されています。2010年の暮れにスタートしたこの活動は、さまざまな協力者を得て、各地に「相談室」を開設しています。
 この1週間は、「七十二人の集い」のために、そして「ひきこもり」当事者のために、祈りをささげてまいりましょう。