2016年5月  4.女性の管理職
 我が国では1985年「男女雇用機会均等法」が可決され、翌年より施行されました。約30年前に文字通り男女が雇用の場面で区別なく扱われることを謳った法律が施行され、女性の雇用は拡大され、管理職への道が開かれたのですが、その水準は国際的に見ると必ずしも高いとは言えません。2011年の全就業者に占める女性の比率はアメリカの46.9%、フランスの47.5%に比べ、日本は42.2%とそれほど大きく変わりませんが、企業の課長以上や管理的公務員を指す『管理的職業従事者』に占める女性比率は、アメリカ43.1%、フランス39.4%に比べて日本は11.1%とかなり低い水準となっています。
 厚生労働省の「平成23年度雇用均等基本調査」によると、女性管理職が少ない(1割未満)あるいは全くいない役職区分が一つでもある企業の人事担当者にその理由を聞いた結果を見ると、「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」とする企業が54.2%と最も多く、次いで「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在、管理職に就くための在職年数等を満たしている者はいない」(22.2%)、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」(19.6%)が上位3位を占めていました。
 企業の人事制度が女性を管理職に登用しにくいものとなっていることは、主たる原因ですが、その背景に、家事と就業のバランス、特に育児と就業の両立の難しさがあります。子どもが満1歳になる前日まで男女とも休業できる育児休業法が1992年施行され、1995年に「育児・介護休業法」に改正されて、子育て支援策として整備されたのですが、実際にその制度にのっとって休業する比率は少ないのが実情です。政府は、女性が活躍できる機会を増やす施策を推し進めていますが、社会全体が、女性の就労と育児を支援する意識を高く持つことが求められるでしょう。女性の管理職比率が先進諸国で最も低いという現実を受け止め、法律や制度の面だけではなく実質的に男女が雇用の面で機会均等となるように、意識の改革から進めていくことが求められているのでしょう。
 教皇の意向では「女性への尊重」が取り上げられ、「いずれの国においても、女性が尊敬され、尊重され、そのかけがえのない社会貢献が高く評価されますように」祈るよう薦められています。出産・子育てをしながら、女性が就労できる環境が充分に整うようにと、祈りをささげてまいりましょう。