2016年6月  4.賢明な判断と大胆な行動
 にわかに政治状況があわただしくなりました。選挙権が18歳に引き下げられて初めてとなる参議院議員選挙の日程が明らかになり、また、東京都知事が辞職したのを受けて、その直後にも東京では選挙が続きます。民主主義の根幹は選挙です。公正な選挙制度のもとでの高い投票率が、民意を反映した代表の選出の条件となります。一人ひとりが政治に高い関心を持って投票を行うことは、自分が属する社会に対して持っている大きな責任ですので、自覚を持って行動いたしましょう。
 日本の教会は、6月の意向として「司教団のため」に祈るように求めています。そして、「賢明な判断と大胆な行動」の力が与えられるように願っています。ここで、キリスト者としての賢明な判断と大胆な行動について考えてみました。民意の反映のためには、民主主義の制度の根幹である多数決の原理が尊重されます。しかし、私たちキリスト者は、自分の都合や自分の利益のために自分の意見を表明するという「民意」を超えて、神の望みを祈りの中で汲み取り、その場にイエスがいらしたらどのようになさるかを思い巡らし、行動の基準とすることが求められるのです。教会では、熟慮して判断するという意味にあたるdiscernment(ディサーンメント)の訳語として、「識別」という語をあてて、この「賢明な判断と大胆な行動」のうしろだてとしているのです。
 個人ではなく、共同体としてこの識別を行う最も典型的な場面は、コンクラーベ(教皇選挙)です。主に祈り分かち合いながら、その時の神の望みを選び出していくのです。日本の教会がいつもコンクラーベにあらわれる共同体による霊的識別の手続きのように、神の望みを汲み取りそれを選び取っていく道を歩めることができるように、そして私たち一人ひとりも「識別」することによって生活を整えることができるように、祈ってまいりましょう。