2016年7月  3.キューバのために
 7月の福音宣教の意向は「ラテンアメリカとカリブ諸島」です。教皇フランシスコを私たちカトリック教会にささげてくださったアルゼンチンにそして、連帯を強めながら権力に屈せず常に福音を生きてきたラテンアメリカの教会にも、感謝をささげましょう。
 カリブ諸島が教皇の意向に加わっていることに、新しい動きを感じます。カリブ諸島とはメキシコ東部のカリブ海に点在する美しい島々で、西インド諸島とも呼ばれることがあります。主な国々は、キューバ、ドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカ、プエルトリコなどで、コロンブスの新大陸発見以来、スペインによって統治されてきた地域です。
 私たちの記憶の中には、キューバ危機があります。フロリダのすぐ南に位置するキューバが、1959年の革命の後にアメリカ合衆国との外交関係の悪化から、ソヴィエト連邦との関係を強め、やがて明確な東西の対立構造の前線に浮上して、キューバを舞台にソヴィエト連邦とアメリカ合衆国が核戦争に突入する危機に直面した事態がありました。危機は回避されましたが、以来キューバとアメリカの国交は断絶した状態が続きました。
 記憶に新しいことですが、この春、アメリカ合衆国とキューバとの国交が回復されました。オバマ大統領夫妻がキューバを訪問したことが、世界のトップニュースで伝えられました。その国交回復の陰に、現教皇フランシスコの執り成しがあったことが報道されています。カトリック教会の仲介によって、50年を超える国交の断絶に、終止符が打たれることになったことは、とても喜ばしいことです。
 さて、キューバは革命以前には、人口の約70パーセントがカトリック信者でした。スペイン文化の影響でしょうか、他のラテンアメリカと同様に、カトリックは人々の間に広まっていました。しかし、革命によって信者数は40パーセントにまで減少してしまいました。今、アメリカとの関係を回復させて、国際社会の一員として諸外国とさまざまな関係を再構築しているキューバですが、人々の心に、キリスト教の豊かさをもう一度伝えて、心豊かに日々を暮らすことができる社会へと歩みを進めていくことができるように、私たちも教皇の意向に心を重ねて、祈りをささげてまいりましょう。