2016年11月  3.国境を越えた神の国
 日本の司教協議会の社会司教委員会では、この9月に「国境を越えた神の国をめざして」と題する文書の改訂版を発行しました。これは、1992年1月5日に発表された同じタイトルのメッセージを、今日に状況を鑑みて、データや文章の一部修正・説明を加えて再版したものです。B6サイズで13ページの小さな冊子ですが、今日の流動化社会にあって人々の移動がますます活発となった世界で起きている移民・難民について、日本のキリスト者として考えるべき大切な点を、ていねいに説明しています。
 特に第4項の「日本の教会の課題」では、市民運動や行政とともに取り組む課題として7つの点を、また、教会独自の課題として2つの点を掲げて、日本の教会全体として取り組むように促しています。教会や信徒のグループなどで、勉強会の資料として活用されることを願っています。
 ところで、教皇の意向にそって先々週にも移民・難民について共に祈りましたが、さまざまな理由で故郷を離れて暮らす人々が、すでに暮らしている人々から歓迎され、分け隔てなくおつきあいを進めていくことはけっして容易なことではありません。人間の自然な感情からすれば、異文化は受け入れがたいものなのです。しかも、故郷を離れて暮らす人々の経済的状態は厳しい場合が多いので、受け入れる側の社会がある程度の負担をしなくてはなりません。この移民や難民ことを考えるとき、経済の論理を用いて解決しようとすれば、自ずと人々に苦しみと悲しみをもたらす施策が幅をきかせることになります。経済の論理ではなく、福祉の論理で、お金を大切にするのではなく人のいのちを大切にする方向で解決を図るべきことなのでしょう
 わたしたちのキリスト教では、聖書にある「よいサマリア人のたとえ」を祈って、苦しんでいる人の隣人となるべき心を養っています。そして、未来には、司教委員会の冊子のタイトルにあるような「国籍を越えた神の国」が実現するのでしょう。教皇の意向、そして日本の教会の最新の文書の意向にそって、日々の祈りをささげてまいりましょう。