2016年12月  1.兵士となった子どもたち
 国連総会で採択された「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」が2002年2月12日に発効されました。以来、戦争や武力紛争に兵士として18歳未満の子どもたちが使われていることに対し、社会の関心を引き出すために、毎年2月12日に、レッドハンドデー(Red Hand Day)が開催されています。
 そしてこの12月、教皇は世界共通の意向として「『子ども兵士』の撲滅」を掲げています。一日も早く、一人でも多くの子どもが兵士となっている状況から解放されるように、国や宗教の違いを超えて取り組んでいこうと呼びかけているのです。
 ユニセフの推計によると、子ども歩兵の数は約25万人となっています。開発途上国の武力紛争でその実態の多くが明らかにされ、戦闘員として武器を取って戦うことを強いられるばかりか、誘拐、スパイ活動、物資の運搬など幅広い活動に従事させられています。また特に女性の場合は、兵士の妻となることを強要されたり、性的虐待にあったり、兵士の身の回りの世話などをさせられたりすることが多いようです。
 さらには、恐怖を感じさせないために薬物が使われたり、火薬にトルエンを混ぜて中毒や依存を起こさせて逃亡や脱走を防止するなど、人間としての扱いを受けられない子ども兵士もたくさん存在しているのが実態です。この世にあってはならないことです。
 その多くの子どもたちは、誘拐されて戦場で訓練を受けるようになることが多いですが、貧困と飢餓が原因で、家族のための食料を確保するために売られていった子どもたちもたくさんいます。中毒や依存といった卑劣な方法で逃亡を防ぐばかりでなく、逃亡しようとする子どもたちには大人の兵士たちの銃口が向けられています。
 ひとたび兵士となった子どもたちは、被害者としての側面ばかりか、加害者としての側面ももっています。しかも、人のいのちを否めた心の傷は、簡単に癒やされることがないので、彼らの社会復帰はきわめて難しいと言われています。
 さて、私たちは何ができるでしょうか。正義と平和の推進のために、一つ一つ目の前にあることに誠実に立ち向かっていくことがまず求められるのでしょう。開発途上国の経済が自立できるように、搾取や強奪によって得た食料や資源を取引していることが分かれば、そのような商品を不買にするフェアートレードに関心を示したりして、さらには富の公正な分配を心がける経済システムを模索したりして、貧困や飢餓をなくしていくことが、何よりも必要なのではないでしょうか。開発途上国の紛争の間接的な原因には、やはり貧困と飢餓が関係していることも多いのです。
 この1か月は、教皇の意向に心を合わせて「子ども兵士」が一人もいなくなるようにと祈りながら、正義と平和の名のもとで公正な経済活動が行われ、人々の間で富が公平に分配されるようにと祈ってまいりましょう。