2016年12月  2.今、ヨーロッパのために祈る
 教皇の12月の意向は、ヨーロッパです。ヨーロッパは大きな曲がり角にさしかかっています。
 第一次世界大戦、そして第二次世界大戦を経て、隣国どうしが戦うことの悲惨さを再び繰り返すことがないように、徐々にヨーロッパの統合に向けて歩みを進めてきました。まず、EEC(ヨーロッパ経済共同体)を創設し、EC(ヨーロッパ共同体)に発展させ、そのもとで欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(Euratom)の三つを運営し、そして、1993年 11月1日にEU(欧州連合)が発足し、その後多くの国がEUに加わり、ユーロという共通の貨幣を用い、EU内の移動移住の自由を保障した一つのヨーロッパとしてのまとまりをもつに至ったのでした。
 ところが、他の先進諸国と同様に、物質主義と世俗化が進行して、精神的な成熟が蔑(ないがし)ろにされ、宗教が凋落の一途をたどり始めたのでした。ヨーロッパの宗教はキリスト教です。もちろん、習俗や習慣としてキリスト教は影響を保ち続けていますが、個人の信仰は徐々に失われ、教会離れが一段と進行した事実がありました。さらに、ここ数年、膨大な数の移民、難民が中東からヨーロッパに流入し、イスラム教の人口も増大してきています。
 ヨーロッパのキリスト教は、その真価が問われています。常に貧しい人の側に立ったイエスに倣い、愛といつくしみをもって人びとに奉仕する姿勢は、私たちを真の正義と平和に導くための信仰の中心です。ヨーロッパの教会が、そしてヨーロッパのキリスト者が、この愛といつくしみに立ち帰って、日々を誠実に謙遜に生きることができるようにと、私たちも心を合わせて祈りをささげてまいりましょう。