2016年12月  4.あなたが造られたすべて
 12月14日、東京の麹町(聖イグナチオ)教会で、日本カトリック司教協議会社会司教委員会主催のシンポジウム『父よ、あなたが造られたすべてとともに、あなたをたたえます』が開催されました。このシンポジウムは、『回勅 ラウダート・シ』と『今こそ原発の廃止を』の出版を記念して行われたものです。
 日本のカトリック教会は、21世紀の到来に先立ち、「いのちへのまなざし」という司教団メッセージを発表しました。その中で、電力を再生エネルギーへ転換していく必要性を唱え、原子力発電についてはその危険性について言及しましたが、廃止を訴えるまでには至りませんでした。2011年3月11日の東日本大震災による津波で、福島第一原子力発電所の事故が起きて、多くの人びとの生活が奪われ、国境を越えて放射能汚染が広がった事実を踏まえ、司教団はその年の11月8日に「今すぐ原発の廃止を」のメッセージを発表しました。
 今回出版された書籍『今こそ原発の廃止を』は、『回勅 ラウダート・シ』に示された教皇フランシスコの環境問題に関する考えに学びつつ、2011年の脱原発のメッセージを補完し、神学、哲学、宗教学、科学技術の専門家からなる編集委員会によって編纂されました。第1部では、福島原発事故を起こした当事国日本の核問題についての歴史を振り返りながら、事故の被害の実情をまとめています。第2部では、科学的技術的な説明に加えて、科学と倫理の関係についても考察しています。第3部では、『回勅 ラウダート・シ』の基本的な考え方を紹介しながら、私たちの生活様式をより簡素な方向へと促すようなまとめがなされています。
 いつくしみの特別聖年が閉じられた今のこの時、私たちは、環境問題について学び、教皇の意向、そして日本の教会の意向を踏まえて、自然に優しい、造られたすべてに優しい生活様式へと招かれています。このことを意識して、主の降誕を待ち望むこの1週間を祈りのうちに過ごしてまいりましょう。