2017年5月  4.子どものための教育支援
 貧困は、弱者にとって最も厳しい現実です。子どももある意味で弱者と捉えることができます。
 今日の経済活動は、そのほとんどすべてが金銭的価値に置き換えられて交換されています。つまり、お金を出して必要なものを手に入れるのです。交換のための金銭(お金)が必要最低限の生活を維持する額に至っていない状況を、貧困と言います。
 貧困はまず、交換のために必要な財が不足していることから始まります。その財とは、提供できる労働、知識やアイディア、技術や技能、所有する不動産などです。このような財を、それを必要としている人や団体と交換して、金銭的報酬を受け取ることから、家の経済の財源が確保されるのです。一般的には、労働の対価として賃金が支払われます。
 ところで、このような財を身につけるためには、そのための養成を受けることが必要です。教育は、豊かな人格を形成するためのものですが、同時に他の人に提供できる知識や技能を身につける機会でもあります。子どもが貧困の状態に置かれると、この大切な教育に支障が来(きた)します。
 2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し、翌年の1月から施行されたことに関連して、4つの支援策が実施されるに至りました。第一は、教育支援です。貧困が原因で子どもが教育を受ける機会を失うことがないような対策で、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない教育費負担の軽減を目指しています。
 第二は、経済支援で、生活費や必要な支出を扶養者に応じてきめ細かに支援します。三番目は、生活支援です。大人から児童まで住宅の確保から物質的、精神的な課題悩みに総合的な解決を目指しています。そして第四は就労支援です。ひとり親を重点的に、就業相談から学び直しや職業訓練の促進、ライフワークバランスを考慮した就業機会獲得まで、トータルに支援しています。これらが行政によって行われている社会政策となります。
 貧困の対策は、行政による支援だけで、決して充分とは言えません。そこで必要とされることは、民間の非経済的な活動をとおしての支援となります。災害の復興や社会福祉の実践でも同じことですが、基本的には報酬を求めない、ボランティア活動がそれを支えています。子どもの貧困に対してボランティアが最も活躍できる領域は、何と言っても教育支援でしょう。大学生のボランティアがこども食堂に出向いて学習支援を行う活動などがありますが、たくさんのミッションスクールを運営しているキリスト教の団体には、経済的な理由から教育を受けることができない子どもたちのために、充実した奨学金の財源を確保することも求められています。
 今月の日本の教会の意向に心を重ねて祈りながら、子どもの教育支援のために、自分自身でどのようなボランティア活動ができるかを考える1週間と致しましょう。