2017年6月 1.国際間の軍事的緊張 |
シリアの内戦が続く中、アメリカは化学兵器の使用を理由に、政府軍が展開する地域に対して空爆を行い、中東の軍事的緊張が大いに高まりました。続いて東アジアの北朝鮮による核兵器とミサイルの開発を阻止しようと、アメリカは軍事力を極東の海洋に集中的に配備し、一発触発の危機が生じています。ミサイル発射の実験に際しては、全国的な国防システムのJアラート(全国瞬時警報システム)が発動され、東京の地下鉄が運行を一時的に停止する事態にもいたっています。もし朝鮮半島で軍事衝突が起きれば、想像を超える甚大な被害が想定されることから、この緊張を外交的な手段で解決することが切に求められています。このような中で、国の指導者たちが確固たる信念をもって、戦争や紛争を回避する方向での政策を進めることが、今この時に、強く求められています。 ところで、教皇の今月の意向では、武器売買の根絶に向けて国の指導者がリーダーシップを発揮するように、ともに祈ることが勧められています。実は、武器や兵器の生産は、その国の経済にとって大変重要な産業でもあるのです。各国の軍事費がすべて人々の福祉や医療のために使われるならば、貧しく苦しんでいる人々はどれほど楽になるでしょうか。しかし、もしもの時のために、各国は最新の武器や兵器を装備して備えているのです。自国で武器や兵器を生産できない小さく貧しい国々でも、国防の名のもとに武器兵器を購入しなければなりません。そして、うがった見方かもしれませんが、武器・兵器は使用してみないとその威力は分からないばかりか、使用されることは消費されることですから、軍需産業の利益が増大することになります。武器・兵器の売買を禁じて平和な社会を構築しようとするときに、軍需産業が国の経済にもたらすプラスの影響がその力を削いでしまっているのも事実です。実際、日本の大手製造企業においても、さまざまな軍需品が製造されているのです。 国の経済を、武器・兵器の製造に依存する体質を改善し、確固たる信念をもって武器の売買の根絶に向かって歩むことができるように、心を合わせて祈ってまいりましょう。 |