2017年8月  4.芸術家を育てる
 被造物の美しさに気づかせてくれるたくさんの芸術的な逸品に出会うたびに、その創作にあたった方の人生を思い浮かべてしまいます。作曲家にしても画家、彫刻家にしても、どのようにして日々の糧を得ていたのか、どのようにして生計を維持していたのか、とても心配になります。というのも、今日、芸術の世界を目指している若者たちのほとんどは、アルバイトで収入を得ているからです。芸術の世界で、しかも、若いうちからその創作力が評価されることは、きわめて稀(まれ)だからです。
 歴史の中でも、数々の有名な芸術家たちが、日々の糧にも困った生活に陥ったことが語られています。私たちの心に気づきと感動を与えてくれる、特別な才能を与えられた人々が、創作活動に専念できるように、私たちは何らかの支援をすることが必要なのでしょう。ルネサンス期のイタリア・フィレンツェにおいて銀行家、政治家として台頭した、フィレンツェの実質的な支配者で、後にトスカーナ大公国の君主となった一族であるメディチ家は、その財力で、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ヴァザーリ、ブロンツィーノ、アッローリなどの多数の芸術家をパトロンとして支援し、ルネサンスの文化を育てる上で大きな役割を果たしたことでも有名です。今では特定の資産家がスポンサーになるようなことはあり得ませんが、それに変わって若い芸術家たちを育てる仕組みもできあがっています。国のレベルでは、文化庁を中心として、さまざまな助成金を設けていますし、財団法人やNPO法人などが支援の手を差しのべたり、コンテストを開催したりしています。
 大きな気づきを与えてくれる芸術は、宗教と深いかかわりをもっているはずです。ところが、日本の文化の中では、特定の宗教に関係した創作活動に対して、助成や支援を受けにくい状況があります。神道や仏教に関連した創作活動でしたら、それなりに支援する組織もあるのですが、キリスト教に関する芸術活動を支援する団体は、きわめて稀です。列福式で聖画を目の当たりにして感動した私たちですが、作者のために祈ったり、あるいは財政的な支援を行ったりしたことがあったでしょうか。
 今週は、芸術家を育てるために、心を合わせて祈り、また支援の輪が拡がるようにと祈りをささげてまいりましょう。