2017年10月  1.失業率に思う
 10月に入りました。晴天の日には青く澄んだ空をのぞみながら、秋の訪れを満喫できる季節です。この晴れ晴れとした日々であっても、重い心で毎日を過ごしている人がたくさんいることを忘れてはなりません。働きたくても仕事がなくて、経済的にぎりぎりの生活を強いられている人々です。失業者とは、仕事はないが就業可能であり、かつ仕事を探す活動をしている者を指しますが、仕事を探す意欲を失って暮らしている潜在的失業者たちもいるのです。
 教皇は今月の世界共通の意向として、働く人たちと失業している人たちのために、心を合わせて祈りをささげることを呼びかけています。今週は、失業者、潜在的失業者と心を合わせて祈ることにいたしましょう。
 失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合を表します。つまり、仕事を探している人の比率です。日本は3.06パーセント(2017年4月時点でのIMFの推計)ですが、2002年には5.56パーセントを記録しました。でも、世界的に見るならば、日本は失業率の低い国の一つです。国際的に比較してみますと、今年の3月の統計で、最も高い国はソロモン諸島で何と30.40パーセントに達しています。失業率が20パーセントを超えている国々のなかには、スペイン、ギリシャなどのヨーロッパの国々も含まれています。
 20パーセントの失業率とは、100人が働きたいと思っていても、80人にしか仕事がない状況です。つい先日の主日のミサで読まれたぶどう園の労働者のことが頭によぎりますが、天の国とは違ってこの世では、働いた時間分しか賃金を払ってもらえません。ですから、職に就いていない人には、経済的な困窮がすぐに押し寄せてきてしまうわけです。
 近代経済学は、完全雇用を前提に理論を構築しています。でも前述のように高い失業率の現実があります。失業を解消するために知恵を働かせることはもちろんですが、一人でも多くの人が働くことができるように祈ることも、大きな力となるはずです。
 働きたくても仕事がない人の心に自分の心を重ねて、経済活動の中に生まれる不平等が解消されるように祈ってまいりましょう。