2017年12月  4.フレイルって何
 人間は年齢を重ねていくと次第に心身が衰えていきます。これは生命をいただいている被造物のすべてがたどる道筋です。そして人間はやがて自分でできることを一つずつ神様にお返しして、他の人の助けと支えが必要となります。言葉としては「要支援」や「要介護」に至るのですが、ここに至る道筋はゆっくりとしたものです。この健康な状態と病気、あるいは手助けが必要となる状態の「中間的な段階」をフレイルと呼んでいます。
 国立長寿医療研究センター(愛知県大府市) が脳卒中などの持病がある人を除く65歳以上の5,100人を対象に行った調査では、11%の人がこのフレイルに該当しました。
 以前は「虚弱高齢者」と呼ばれていた段階ですが、老年医学会では、ちょっとした気づきと支援があればまだまだ改善でき、坂道を転げ落ちるように一気に老化が進むのを防いで要介護になる時期を先送りできると発表しています。ですから、弱り始めの時期、つまりフレイルの状態にさしかかったことを適切に見つけることがとても大切とされています。
 周囲に人も、また自分自身でも、フレイルを診断することができます。長寿科学振興財団のウェブサイトに詳しく掲載されていますが、体重減少、主観的疲労感、日常生活活動量の減少、身体能力(歩行速度)の減弱、筋力(握力)の低下の5つの項目でその状態をチェックします。
 さて、自分がフレイルの段階にさしかかったなら、人生でいただいた恵みを、次の世代に継承する時が来たことを自覚してはどうでしょうか。周囲で暮らしている人がフレイルの段階さしかかったら、その人が人生でいただいた恵みを分かち合っていただいてみてはいかがでしょうか。知識は積み上げていくことができます。人類が蓄えた知識は、私たちに科学技術の発展と繁栄をもたらしてきましたが、残念ながら知恵は積み上げることができないのです。人をどのように愛するか、神のいつくしみをどのように感じ取るかは、知識のように世代から世代へと積み上げることができないのです。ですから、一人ひとりが知恵を深めていくために、人生の先輩がいただいた恵みを、心で感じ取って自分の知恵に重ねていくほかにないのです。
 12月の教皇の意向は、高齢者たちが知恵や経験を生かして信仰を伝え、次の世代につなげることができるようにと祈ることを奨めています。この意向を心に留めて、フレイルの段階に、伝える側も受け取る側も、なすべきことを心がけてまいりましょう。