2018年1月  2.「共通」の意味
 宗教は、愛といつくしみによって、正義に満ちた平和な社会を築き上げることを目指して、謙遜に生きようと奨めています。これはいずれの宗教にも共通した理念でしょう。人間が人間として幸せに生きることは、すべての人に共通した願いでしょう。
 今、言葉として「共通」を用いましたが、この意味を取り違えると、大きな過ちを犯してしまうことになりますので、整理しておきましょう。広辞苑によると、共通とは「二つまたはそれ以上のもののどれにでも通ずること、あてはまること」です。つまり、二つまたはそれ以上のものが、それぞれ違ったものであること、多様であることが前提になっています。同じ、あるいは同一のものには、共通という言葉を使うのはふさわしくありません。
 さて、日本の教会は今月の意向で、「教会が、異なる宗教を信じる人々の信仰を尊重し、正義と愛に基づく平和な社会の実現のために共に祈り、協力しあうことができますように。」と掲げ、多様である宗教が互いに違いを認めながらも、どの宗教にも当てはまること、つまり共通点を見つけて、それを了解し合うができるように祈ることを奨めています。一人ひとりが違うように、一人ひとりの信仰も違うはずです。その違いの中で共通なものを認め合って、一つの宗教の枠組みのなかにその人の信仰が位置づけられます。それは、キリスト教、イスラム教といったかたちで宗教の枠組みを構成しますが、またこの枠組みも実に多様なのです。その多様性の中に共通なものを探し、互いにそれを認め合うことで、諸宗教が一致して、人類の課題に取り組むことができるようになります。
 自分と同じ信仰を相手に求めることは、「独善」です。多様であることを認めて、「共通の善」に向けて歩むことができるように、日々の生活を整えてまいりましょう。