2018年3月  4.原発事故の国の責任
 東京電力福島第一原発事故に伴い、福島県から東京都や愛知県に避難している47人が国と東京電力に計約6億3500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3月16日、国と東京電力に計約5900万円を原告42人に支払うよう命じました。その前日15日には、京都府に自主避難するなどした57世帯174人が国と東京電力に計約8億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、京都地裁は国と東京電力に原告110人に対して約1億1000万円の賠償を命じた判決があり、これに続くものでした。これらの判決は、原子力発電所の再稼働に反対している多くの人が注目していたもので、東京電力はもちろんのこと、国の責任も認定した判決です。原発避難者の集団訴訟は全国で約30件起こされており、地裁判決は6件目になります。このうち被告に国を含む訴訟の判決は5件目で、千葉地裁だけが国の責任を否定しています。
 事故から7年が経過した被災地では、いまだに立ち入りが禁止されている地域があり、避難解除になった地域への帰還も思いのほか進んではいません。メルトダウンした原子炉からは、いまだに高い放射線が放出され、廃炉への目処も立っていません。このように、ひとたび暴走すると人類の生存に危機をもたらす核エネルギーへの依存から、なぜ国は原発廃止の方向への転換ができないのでしょうか。経済性、利便性を求める私たち生活者のわがままだけではなく、原子力発電所の建設に関わるたくさんの企業の利益が関係しています。そして、国と企業とが安全神話を組み立てて情報をコントロールしてきました。
 行政の府である政府と立法の府である国会の権力の乱用を制御するのが司法の府である裁判所です。今回の判決はまだ地裁の段階で、結審するまで長い過程がありますが、これからの方向性に大きな影響を与えるものであると言えるでしょう。
 日本の教会は、「原発事故がもたらした惨禍を直視し」「人間の幸福と尊厳を守る社会」の実現のためにともに祈るように奨めています。避難生活を余儀なくされている方々の心に寄り添いながら、被災者の幸福と尊厳のために祈りをささげて過ごしてまいりましょう。