2018年5月  4.見えない家庭の中
 子どもの貧困について、その現実をきちんと受けとめ、ともにこの課題に取り組まなければならないとの認識は、日本社会によく浸透していると言えるでしょう。「子ども食堂」と呼ばれている地域の子どもたちに無料や低額で食事を提供する施設が、2018年4月には全国2286カ所で開かれているとの調査結果も示されました。
 7人の一人の子どもが貧困状態にあるという統計があります。ということは、クラス30人の教室に4人の貧困状態に置かれた子どもがいることになるのですが、外見からはどの子が貧困なのかは、なかなか見えてきません。なぜならば、服装からも判断しにくいですし、スマートフォンなどのSNSの機器なども、貧困状態に置かれているからといって所持していないわけではないのです。このことは、貧困状態にある子どもたちについての実態調査からも明らかになっています。貧困状態に追いやられてしまった子どもの多くは片親の家庭で暮らしています。親は就業しなければならず、子どもにITの先端機器を買い与えることで、子どもとかかわらなくてもすむ状況を作っているからだといった評論も聞かれます。
 貧困の影響は、食事の回数や、家族の団らん、友人や親戚との交流といった、一般の目からその状況が見えにくい部分に現れています。教室では、先生をはじめクラスの誰も「その子」が貧困状態にあることに気づかないことさえあります。ここに、子どもの貧困問題を解決するにあたっての難しさが潜んでいるのでしょう。
 DV(ドメスティックバイオレンス)も同様です。家庭の中で起きている深刻な出来事ですが、外からは見えない秘められた事象なのです。DVにしても貧困にしても、その家族は外の人がその事実を知ることがないように、ひた隠しにする傾向も強いのです。
 さて、日本の教会は「子どもの貧困の解消」を今月の意向として掲げています。そして「日本の社会全体が支え合うことができますように」と祈るように勧めています。その祈りに際して、「子どもから発信された『助けてください』という小さなしるしを、一つも見逃すことがないように、私たちに敏感な心をお与えください」と祈ってまいりましょう。