2018年10月  3.奉献生活者を支える
 人々の仕事、職業を研究する学問では古典的プロフェッショナルという考えがあります。プロフェッショナルとは、今日では専門的な優れた技術や技能を備えた職業の領域のことを指したり、アマチュアと対比させて、その技能や技術で生計を立てているスポーツ選手などを指したりしています。しかし本質的には、仕事の対価として報酬を求めない職業の領域をプロフェッショナルと呼んでいました。
 そして、人類の歴史の中では、プロフェッショナルは人のいのちを左右する重要な仕事を受け持っていたのでした。一つは「医」の領域です。薬草の種類や調合方法に長けていたり、症状によってその病の原因がどこにあるのかを見極めたりと、人々にとってはとても大切な、しかも他の人がまねることができない専門性を備えていました。その人に命を救ってもらった時に、対価として何を差し出せばよいのでしょうか。命は経済的な価値でははかることができません。そこで、その人が暮らす共同体では、「医」のプロフェッショナルが一定の生活水準を維持することができるように、皆で支えていました。そして、支えるために供出する金品は、自発的にその量や数を決めていたのでした。お分かりにように、寄付や寄贈品によって、プロフェッショナルの生活は支えられていたのでした。
 古典的プロフェッショナルには「医」のほかに二つの領域があります。一つは「法」、一つは「宗教」です。「法」は、人々の間の諍(いさか)が命の奪い合いにならないように、利害を調整する大切な役割があります。「宗教」は、私たち人間と神とを結び、私たちを自然災害や天候不順による飢饉の際には、希望を与えてくれる役割を担っていました。また、宗教は、苦しんでいる、あるいは困っている小さな命にも寄り添っていました。
 さて、今月の教皇の意向として、奉献生活者が使命に打ち込むことができるように祈り支えることが掲げられました。もちろん、祈りによって奉献生活者を支えることは、私たちに与えられた霊的な奉仕です。そして、古典的プロフェッショナルの一つである「宗教家」も寄付や寄贈品によって生活が支えられていたことを理解した今、今日の世界での「宗教家」である奉献生活者を金品によって支えることの大切さも、思い起こして過ごしてまいりましょう。奉献生活者の生活を支えるのは、私たち一人ひとりの役目であることを、思い起こして過ごしてまいりましょう。