2018年11月  2.自死者の家族の慰めのために
 警察庁の資料に基づいた自殺に関する統計資料によると、日本の自死(自殺)者数は、1998年以降、14年連続して3万人を超える状態が続いていました。そのピークは34,427人に達した2003年でした。毎日90人を超える人が自ら命を絶っていく状況に、国民全体が危機感を抱き、宗教関係者は相談窓口などを開設して防止策の限りを尽くし、また、政府や自治体も対策を講じたことが功を奏したのでしょうか、2012年には15年ぶりに3万人を下回ることになりました。そして、2017年には21,140人と、ピーク時よりも1万人以上自死者が減少しました。
 しかし、自死者がいなくなったわけではありません。交通事故による死亡者が年間4千人ほどで推移していますが、その5倍にもあたるのです。一人でも自死者が少なくなるように、社会が一丸となって取り組まなければならない課題です。
 自死者を出してしまった家族の心の痛みを感じ取ることはできませんが、とてつもない大きさであることは間違いないでしょう。愛する人を失ったときのストレスは人生における最大級のものだとの研究が報告されていますが、ましてやその原因が自死であれば、自分の接し方や話し方に落ち度があったのではないかと、自分を責めることにもなるでしょう。心の平安を取りもどすことは容易ではありません。
 自死であれ事故死であれ、神からいただいた命を神にお返ししてからは、神がその死を受けとめ、み手の中に受け入れてくださることにお委ねするほかに、私たちには術(すべ)がありません。命の始まりにもそして命を閉じることにおいても、そこには私たちの思いを超えた神の業が働いているのです。
 11月の死者の月にあたって、日本の教会は「世を去った人々とその遺族」のために祈るように奨めています。心を合わせて「神のあわれみよって永遠の安息が与えられ、遺族には慰めが与えられますように」と祈ってまいりましょう。