2018年12月  2.文化を重んじて信仰を伝える
 教皇は今月の意向で「信仰を伝える人たち」について、心を合わせて祈るようにと勧めています。その中で、「それぞれの文化と対話しながら」と、とても大切な要点をきわめて簡潔に述べています。
 文化とは、そこで暮らしている人々が、何を大切に生きているか、何を見て美しいと思い、何を見て汚らわしい、あるいはいけないことだと思うかなどの価値観が、共通に受け入れられているその総体を指しています。例えば、私たち日本人は、そばを食べるとき、空気を一緒に吸い込みながら音を立てて口の中にそばを滑り込ませます。茶道のお点前でも、音を立ててすすり飲みます。音を立てることが、むしろ美味しいことを表しているとさえ言えるのです。ところが、西欧の文化では、音を立てて食べ物や飲み物を口に入れることは、きわめてはしたなく下品なことなので、家庭で子どもを教育する際には、厳しく躾(しつ)けることの一つとなっています。
 箸でそばを食べるとき、音を立てないで口に入れることは不可能なのです。日本で食事をするときには、日本の文化に従うことが合理的でしょう。イエス・キリストの教えを日本に伝えようとする場合、「音を立て食べることは下品です」といった土着の文化を否定した考えを強制してはいないでしょうか。
 教皇は続けて「その時の状況にふさわしいことばを見いだすことができますように」と結んでいます。文化と文化が出会うと、新しい第三の文化が生まれますが、それには長い年月が必要ですし、二つの文化が互いを深く理解することが不可欠です。
 信仰を伝える仕事に従事している人たちが、文化を重んじて、ふさわしいことばを見いだすことができるようにと祈りながら、この一週間を過ごしてまいりましょう。