2019年1月  4.意向を祈る
 「きょうをささげる」は、教皇フランシスコが、心を合わせてともに祈るための意向を、全世界のキリスト者に毎月提示する教皇庁主管の活動です。ここ数年間で進められた見直しと再構築の結果として、「祈祷の使徒」という名称を「教皇による祈りの世界ネットワーク」と改めて、その趣旨がよく理解できるような配慮がなされました。
 ところで、「意向」をどのように理解したらよいのでしょうか。意向と祈りそのものは同じなのでしょうか。違うとすれば、それぞれをどのように捉えたらよいのでしょうか。霊性センターせせらぎで開催されている「祈りを深めるための研修会」では、祈る時には、きちんと意向を立てて祈るようにと学びます。つまり、神に願いたいこと、切に望んでいることを明確にして、その心の思いを神の御心に重ねて、神と対話することです。心の営みとしては、意向を立てることと神と交わることとの2つの段階を踏んでいるのです。
 さて、1月の教皇の意向は、福音宣教に関係する領域のもので、テーマが「若者とマリアの模範」です。教皇フランシスコが世界中のキリスト者とともに心を合わせて神に願いたいことは、意向の文章にあるように「若者たち、特にラテンアメリカの若者たちが、マリアの模範に倣い、主の呼びかけに応えて、福音の喜びを世界に伝えることができますように」です。この具体的な意向をいただいた私たち一人ひとりは、この文言を口で唱えて神に願うという「口祷」の祈りが出発点となりますが、その祈りを深めようとするならば、教会で伝統的に用いられてきた「レクチオ・ディヴィナ」の4つの段階がとても役立つでしょう。
 まずは意向の文章をゆっくりと味わいながら読み(レクチオ)、次に、その状況について思い巡らし(メディタチオ)ます。例えば、「マリアの模範」とあるので、受胎告知やエリザベトを訪問する場面を心の中に描いて、マリアの素朴さと神への従順を思い起こしたり、「ラテンアメリカの若者たち」とあるので、今日彼らがどのような生活を送っているかを想像したりします。次は、この意向がこの地上で実現しますようにと神に祈り願う(オラチオ)段階です。私たち人間の側から、神に向かって真剣に意向を伝えます。そして最後に、このことについて神との対話の中で、意向の実現のために私に与えられた固有の使命は何かを探す心の営みとしての観想(コンテンプラチオ)を行います。
 毎朝の「きょうをささげる祈り」の折に、レクチオ・ディヴィナに倣って丁寧に祈る時間を見つけることは難しいかもしれませんが、意向を意向として意識するだけではなく、その意向が神の御心に届くように、意向を祈るという習慣を身につけていくように努めましょう。