2019年2月  1.分け隔てなく
 今月の教皇の意向は、人身売買や強制売春、暴力の犠牲者が社会で受け入れられるように、心を合わせて祈ることを薦めています。そして、私たちがこのような人たちに接する姿勢として、「分け隔てなく」と呼びかけています。もちろん、私たちの社会から、人権、人格を無視した犯罪行為が根絶するように祈ることも大切です。もう一方で、「分け隔てなく」という姿勢を貫く勇気を、一人ひとりがしっかりと自覚することも大切です。
 思い起こせば、東日本大震災と津波、そして原発事故から避難して、東京や横浜、あるいは他の地域の学校に転校した子どもたちが、「ふくしま」から避難してきたことを知られるといわゆるいじめにあって、筆舌に耐え難い生活を余儀なくされた出来事がたびたび伝えられました。学校での出来事でありますが、子どもの社会においてだけ、このような「区別」や「差別」が蔓延しているのでしょうか。子どもは大人の後ろ姿を見て育ちます。私たち大人が抱いている「区別」や「差別」の意識が、知らず知らずのうちに子どもたちに伝わり、幼いがゆえに、態度や姿勢のみならず行為や行動に及んで、想像を超えるいじめとして、強烈な「分け隔て」が行われているのでしょう。
 性的暴力の犠牲者が、その被害を届けづらい状況の背景にも「分け隔て」の意識がつよく働いています。特に、結婚を控えた女性が被害にあった場合には、婚約や縁談に影響が出ることを恐れて被害そのものが隠ぺいされてしまうこともしばしばです。この意識は性的暴力の犯罪者に犯行を助長することにもなりかねません。勇気をもって犯罪を告発することも大切ですが、「分け隔て」をなくす努力はそれにもまして大切です。
 この一週間は、自分の心にある「分け隔て」の意識を気に留めながら、一人ひとりを受け入れる社会の実現のために祈ってまいりましょう。