2019年3月  1.キリスト教徒迫害の現況
 教皇の今月の意向は、「キリスト者の共同体の権利の承認」です。今日でも多くの国でキリスト教徒が迫害されています。教皇の意向を契機に、現況を概観してみましょう。
 アメリカにあるキリスト教迫害監視団体の「オープン・ドアーズ」は、キリスト教徒に対する迫害がひどい上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」を毎年発表しています。このリストは迫害指数によって評価されていて、襲撃事件などの「暴力」行為だけでなく、個人生活や家庭生活における制約、礼拝や改宗の自由、職場や地域社会での嫌がらせなど、キリスト教信仰を持つことでかかる「圧力」も評価に反映されています。2018年のリストによると、最も迫害がひどいとされたのは迫害指数94の北朝鮮で、17年連続でした。2位のアフガニスタンが指数93でした。迫害指数81以上の国は「極度」の迫害に直面している国で11カ国が指定されましたが、うち8カ国はイスラム教国で、アフリカ、中東の国が多く、また、ヒンズー過激派による弾圧が激しいインドも迫害指数81で11位でした。一方、共産党政権により、教会の取り壊しなどが伝えられている中国は指数57の47位でした。
 また、迫害と弾圧が急増した国として、エジプト(17位、迫害指数65)とトルコ(31位、同62)が報告され、特に教会に対する爆弾テロが相次いだエジプトでは昨年、200人余りが迫害のために家を失い、128人が殺害されたと報告されています。49人が亡くなった教会爆破事件のほか、修道院に向かうバスが襲われて29人が死亡するなど、キリスト教徒を狙った襲撃事件が相次いでいて、その根底には、キリスト教徒に対する日常的な差別があるといわれています。ネパールやインドなどの地域でも迫害が急増しました。両国では「宗教的国粋主義が高まり、ヒンズー至上主義者の影響力の増大が影響している」といわれています。
 世界人権宣言によって、宗教の自由が基本的人権として保障されているはずの今日、政治体制や固有の文化的背景によって、キリスト教徒であることが差別され迫害されている現状があります。宗教によって迫害され、しかも命を失った人々やその家族のために、祈りをささげてまいりましょう。また、キリスト教徒が、決してこのような宗教による差別や迫害を起こすことのないように、悪の力を退けることを心がけて、この一週間を過ごしてまいりましょう。