2019年3月  3.津波の破壊力
 東日本大震災から8年が過ぎようとしています。この震災の犠牲者1万5千人以上のうち、実に90%以上が「溺死」、つまり津波に呑まれて死亡しました。ですから、津波が発生する時に可能な限り被害を受けないために、津波がどのように発生して、どのように危険なのかを知っておく必要があるでしょう。津波は、地震や火山活動による海底の地殻変動によってプレートが急激に沈み込んだり持ち上がったりして発生する波です。他にも、海底の地滑りが原因の津波もあります。この地滑りは、地上でのものと比べものにならないくらい大規模なもので、一度に500立方キロメートルの土砂が海底で崩れたという調査報告があります。これは東京ドーム40万個分に相当する土砂です。
 このようなメカニズムで発生する津波は高潮と違って、一つの波の長さが長く周期も長く、それだけ大きな力を溜めた波が一気に打ち寄せてきます。普段の波の波長が数メートルとしたら、津波の波長は数百キロ程度だと言われています。そして、とてつもない特徴の一つが、スピードです。津波のスピードは、普段の波からは想像もつかない速さになるのです。時速約800qに達して、何とこれはジェット旅客機の巡航速度とほぼ同じの速さです。ですから、物に衝突したときの破壊力も恐ろしく大きく、たとえ高さ50pの津波でも車1台ぐらいは押し流せるほどのパワーになるのです。しかも、このような計り知れない速さと力をもった波が、一度ではなく、二度三度と次々に押し寄せることによってさらに力を増して、様々な地形効果も含めてさらに力を溜め、想像を絶する破壊力を生みだすのです。東日本大震災の時の被害の大半は、地震の揺れよりも津波による被害だったのも容易に理解できます。
 高さも尋常ではありません。東日本大震災の時の気象庁や国土交通省の記録では、津波の高さは最も高い所で、岩手県大船渡市の「推定16.7m」とされています。しかし、ニュースなどでは、「40.5m」に達した所もあったと報じられていました。「津波の高さ(津波高)」は、単純に海岸に達する時の高さで、陸上を這い上がっていった最も高い地点の「40.5m」は「遡上高」です。海水はそこまで上っていくのですから、そのことを理解しておくことも重要です。
 さて、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は70〜80%と想定されています。また、今後10年以内の発生確率も30%程度に引き上げられました。南海トラフ地震は日に日に、間違いなく発生する可能性が高くなってきているのです。
 東日本大震災と津波から8年が経過した今、津波についての正しい知識を身につけ、その時のために万全の対策を講じておきましょう。