2019年3月  4.中国の教会
 教皇の意向は、キリスト者の共同体の権利の承認です。特に迫害を受けている共同体が、日々穏やかな信仰生活を送ることができるように、そして、キリストがいつも近くにいて、励まし支えてくださっていることを実感できるように、祈りによって支えることを呼びかけています。
 私たち日本の教会も、厳しい弾圧と迫害の時を持ちました。さらに歴史をずっとさかのぼれば、キリストの弟子である使徒たちの共同体も迫害され、たくさんの殉教者が生まれました。そして今日なお、自由に信仰を生きることが制限され、宗教活動が弾圧され、迫害されている共同体が存在しています。
 弾圧や迫害は、時の為政者が、自覚を持って人間としての権利を主張する人々の力によって、その政策を遂行できなくなったり、既得権益を奪われたりすることを恐れて、権力を不当に行使することから始まります。そして、宗教の弾圧と迫害は、基本的人権の侵害の表れですから、参政権や移動の自由などの人間としての他の権利も、同時に侵害されている状況にもなります。
 中国のキリスト教については、カトリック中央協議会刊行の「カトリック教会情報ハンドブック2007」の巻頭特集で詳しく説明されています。その後、水面下でバチカンとの交渉や協議が進められ、2018年に中国政府は、中国福建省ミントン教区の地下教会司教だった郭希錦師を同地区の政府公認教会の副司教にしました。郭希錦師はバチカンが任命した司教であり、長らく中国当局がその地位を承認していませんでした。地下教会司教として過去何度も拘束、尋問され虐待され、バチカンと中国の水面下の交渉の最中にも、地元警察に身柄を拘束されていました。
 今、中国の教会は大きく変わろうとしています。バチカンと中国は、2018年9月の司教任命権問題での“暫定合意”に至りました。バチカンは、中国当局から教会法上の手続きを経ずに任命され、バチカンから破門されていた7人の司教に対して、破門を取り消しました。これに続いて、中国政府は地下教会の司教を政府公認教会の司教の下につけることに同意しました。
 このような状況を、中国のキリスト教徒が正当な権利を保障されたと受け止めてよいでしょうか。まだ依然として、チベットをはじめとする少数民族への弾圧が続き、人々の固有の文化や宗教を承認していない状況が続いています。
 中国でのキリスト教や他の宗教に対する弾圧と迫害が無くなりますように祈りながら、注意深く中国政府の動向を監視し、人権の侵害に対しては強く抗議する心を養ってまいりましょう。