2019年4月  3.いのちの連鎖
 人は誰でも、父と母からいのちを受け継いでいます。この至極あたりまえなことが、人類としては600万年前、生命そのものとしては38億年前からの連鎖として受け継がれています。600万年前に人類はチンパンジーと別の道を歩み始めました。そして、250万年ぐらい前に、私たちと大体同じホモ属が出現し、20万年前に私たち自身であるサピエンスが出現しました。現在は結婚年齢が高齢化していて、寿命も延びていますが、計算を単純化するために、世代間の生命の継承を20年と仮定しましょう。そうすると5世代前にさかのぼると100年になるわけです。ですから、ホモ・サピエンス誕生までさかのぼると1万世代にもなります。
 一人の人には父母が一人ずついます。その父にも母にも父母が一人ずついます。ですから、祖父母は4人、曾祖父母は8人、高祖父母は16人になります。その先には32人さらに先には64人と、そして、20万年前にさかのぼると、先祖の数は2の1万乗という宇宙的な数字にまで膨れ上がりますが、その一つが欠けてもいのちは継承されないのです。
 ですから、人が人のいのちを奪うことは、決してゆるされことではありません。人格、人間の尊厳を尊重することは、いのちを育むうえで最も重要なことです。一つひとつのいのち、一人ひとりのいのちが,すべて尊敬に値するのです。
 日本の教会は家庭の絆の中で「生きる喜びを次の世代に伝えていくこと」ができるようにと祈ることを勧めています。家庭はいのちそのものを次の世代に伝えていく場です。悠久のいのちの連鎖に思いを馳せながら、いま目の前に生きているいのちを尊敬し、互いに理解し合い、相手を思いやって、日々を過ごしてまいりましょう。